お盆が明けた頃、田んぼのイネが穂を出しはじめます。

穂には花が咲くのですが、開花している時間は天気の良い日の午前中のたった2-3時間だけです。

一般的な「お花」のイメージとは少し異なる目立たない花なので、よく観察していないと気が付かないかもしれません。

稈(かん)の内側にはうっすらと穂が見えています。

穂からチラチラ見える白い部分に花粉がはいっています

 

この花のつくりはイネ科(イネの仲間)に共通で、ササやタケにも同じような花が咲きますが、イネのように毎年花を咲かせることはありません。

ネザサの花、花が咲くことは稀です。

ハチクの花。128年に1度だけ咲くとされています。

このように地味な花は、昆虫や鳥に花粉を運んでもらうことはせず、風に任せて小さな花粉を飛ばします。

(この時、風に飛ばされるほど小さな花粉が、人の体内に入ってアレルギー反応が発生すると、花粉症が発症します)

風に飛ばされた花粉が、殻のような部分に隠されためしべに着くと受粉し、やがて「米」になります。

また、この時期の田んぼにはイネに先駆けて様々なイネの仲間たちが穂を出しています。

写真のイヌビエもそのうちのひとつで、とても田んぼに適応した雑草です。

左側がイヌビエ、右側がイネ。とても良く似ています。

穂を出すまではイネと見分けがつかないほどそっくりで、他の雑草と比べても除草されにくいという有利な点があります。

また、イネに先駆けて穂を出すことで稲刈り前に種を落とし、イネと一緒に穂を刈り取られないようなっています。

このような田んぼのくらしに適した特徴は農業が進化させたものとされており、よりイネにそっくりなものやイネより早く穂を出したものが生き残ってきた結果だと考えられています。

いよいよ秋の気配を感じる公園で、小さなイネの花とそっくりさんたちをぜひ観察してみてください。


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