けいはんな記念公園の水景園には小さな棚田があります。

 

 

 

水景園の棚田

稲が青々と茂ってきました

 

 

 

傾斜地の多い日本において、棚田は各地で見られた風景だったようです。里の風景を取り込んだ当公園にとっては棚田は重要な要素であり、水景園の棚田の他、芝生広場や滝組も棚田風のデザインになっています。

棚田と広場について詳しくはこの記事も。

 

水景園の棚田は本物の田んぼでイネを育てています。
なかなかスタッフだけで稲作を続けるのは難しいので、年間登録制のイベント「つちのこ隊」として市民の皆様やボランティアの方に協力していただいています。

 

 

つちのこ隊の田植えの様子

並んで手植え。
ぬかるみの中、みんなできれいに植えていくのは大変です。

 

 

 

先週の土曜日、このつちのこ隊でかかしづくりを行いました。最初の写真に写っている三体がそれです。
稲穂が出るのはもう少し先ですが、今から田んぼを守ってくれています。

昔から田んぼにつきものだったかかし。今回はこのかかしに宿る神様の昔話をご紹介します。
※記憶に頼った記述であり、不正確な内容です。ご了承ください。

 

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昔々あるところに、百姓の夫婦が住んでおりました。夫婦は一生懸命働いて田畑を買い、丹精込めて米を作っておりました。

もう少しで刈り入れという時期になりましたが、この時期になるとスズメが群をなして田んぼに来て、稲をついばみます。追い払ってもきりがありません。
困った夫は本家の爺様に相談してみました。
すると爺様は「そういう時はかかし様をつくってお願いするんだ」と教えてくれました。

 

夫は早速夜なべして三体のかかしをつくり、田んぼに立てて、「正月にはご馳走を供えてお祀りしますで、どうぞ田んぼをまもってくだされ」とお祈りしました。

 

 

 

今年の水景園のかかし その一

この顔…。定番であるがゆえになかなか見ません。

 

 

 

朝になって、夜明けとともにスズメの群れが飛んできました。

夫がやっぱりだめかと思った時、かかしが歌を歌い始めました。
そしてその歌でスズメたちは驚いて逃げて行ってしまいました。

 

 

今年の水景園のかかし その二

一番歌いそう

 

 

 

 

それからもかかしは毎日スズメを追い払ってくれたので、秋にはたくさんのお米がとれました。

 

 

今年の水景園のかかし その三

歌よりもダンス派っぽいかかし

 

 

 

 

その年の暮れ、夫は嫁に「かかし様にお供えするから膳の用意をしてくれ」と頼み、三人のかかし様の分のご飯を用意してもらいました。

そしてお膳を上座において、夫が拝んでふと顔をあげると膳の前に美しい女が一人座っていました。そしてもう一人、また一人と高窓から女が下りてきて三人の女が膳の前につきました。
夫は驚いて「お前さんたちは・・・?」と尋ねると、「年越しのお招き、ありがとうございます」と言います。
男はまた驚いて「ではお前さんたちはかかし様!?」と問うと、「ああそうじゃ。どうかお酌してけろ」と女たちは言いました。

夫は驚くやら喜ぶやらで嫁を呼びながら、自分はお酌し始めました。
そこへ呼ばれて嫁がやってきました。嫁はかかし様をみて、「私という者がありながら、隠し女を三人も!しかも膳まで用意させて!!」と怒ります。

かかし様は誤解を解こうと止めに入りますが、怒った嫁はかかし様さえも追い立てました。
たまらずかかし様の一人が高窓から逃げ出し、また一人と逃げました。

男は最後の一人にしがみついて「どうか帰らねえでくれ」と必死に取りすがって出ていかないよう引き留めました。

 

夜が明けて元旦、本家の爺様が正月のお参りに誘いに来ました。
すると夫はヒエ俵を抱えこんで伏せていました。驚いた爺様が、これはどうしたことかと事情を聞ききました。

話を聞き終わると爺様は、「それはえらいことをしたもんだ。この家に舞い込んだ福の神をおっかあは追い払ってしまったんじゃ。心得違いをしなければ、金三俵を授かる所じゃった。なんとか一人引き留めてヒエ一俵になったんじゃ。」といいます。

夫婦はそれ以来、年の瀬にはかかし様の数だけお膳を用意して、お礼をすることを欠かさなかったそうです。

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かかしに宿る神様が鳥を追い払うだけのお話でなく、年末のゴタゴタまで含まれたお話でした。
人型のかかしが動いたら…怖いような気もしますが、ぜひ見てみたい。

公園のかかしは今日も残暑の中で静かに番をしてくれています。

 

 

並んで立つかかし

かかし?


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