二十四節気「処暑」の更新に合わせ、こちらのページで水景園の見どころを紹介いたします。

——————————————–2021.8.23 処暑

「暑さ処す」。お盆を過ぎ、少しずつ秋の気配が感じられるようになる季節です。
暑さのピークは過ぎましたが、公園は現在、京都府に発令された緊急事態宣言を受け、全園閉園しています(8月20日現在・9月12日までの予定)。
こちらのページの更新は続きますので、おうち時間のなかで「今の公園」を感じていただければ幸いです。

●季節と花色
園芸種と自生種を同列に語る事はできませんが、気候と花色には何らかの因果関係があるように思います。
研究者の談話でも、高山には青系のお花が多く、熱帯には赤が多いという見解が出ており、気候や地域によって花色が違うことは認識されているようです。
虫媒あるいは鳥媒する動物の視覚との関係、ほかには光の強度(紫外線量)との関係も指摘されています。

ここからは個人的な見解ですが、日本の山野の植物を見ていると、
・早春は黄色
・初夏は白
・夏から秋にかけては、ピンクや紫のお花…が多くなる印象があります。

早春はサンシュユやアオモジ、初夏のウツギやカマツカ、夏から秋のナデシコやキキョウ…。

もちろん一概には言えず、目に付きやすい代表種の色なのかもしれませんが、季節ごとに花色に注目してみるのも一つの楽しみ方かもしれません。

今回の見どころでは、この季節に園内で見られるピンク~紫色のお花をご紹介します。

★ミソハギ
水辺に生える多年草。紫がかったピンクの穂状花を、下から順に咲かせていきます。禊萩または溝萩と書かれ、盆の祭事に用いる地域があります(長野県では、ミソハギを水に浸して玄関を清めるのに使うようです)。この時期に長く咲き続けることから、お盆に供えやすいお花のひとつであったことと思われます。公園では、無料区域の小川を彩り、里棚田の一部にも群生があります。

★シュウカイドウ
秋海棠と書き、秋のはじめにカイドウ(海棠・バラ科の花木)に似た花を咲かせることから名付けられました。園芸をされる方には、夏の代表的な一年草「ベゴニア」の仲間といえば、わかりやすいかもしれません。こちらも湿地を好み、紅葉谷の流れの脇に生えています。ピンクの花色が可愛らしく目を惹きますが、残念ながら、現在の紅葉谷のシュウカイドウは数が少なく、見つけられたらラッキーなお花です。

★ホトトギス
秋の山野を彩る多年草で、やや湿り気のある日陰を好みます。公園内には点在しており、紅葉谷、山棚田、里棚田などに株があります。「白地に紫色の斑点」が基本なのですが、白花や黄花、青の入るもの、また枝も直立するものと匍匐するもの(垂れ下がるもの)など、バリエーションがあります。楚々とした風情は茶花にも好まれます。

★サルスベリ
暑さに負けず花を咲かせる、真夏を代表する花木のひとつ。公園では観月楼脇の「光の庭」に2本株があります。ピンクの濃淡、紫色、白などがあります。つるつるの幹を持ち、樹形も比較的整えやすいといわれており、庭木としても人気です。よく見ると、花びらはたっぷりのフリルを持っており豪華です。長く咲き続けるため「百日紅」の名を充てられています。

★ナツズイセン
ヒガンバナの仲間ですが、ヒガンバナより約1ヶ月早く咲き、ピンクの花色が特徴です。ヒガンバナと同じく、花と葉は同時には出ず、花の後に葉を生長させます。里棚田と果樹園に株があり、この8月中旬以降、田んぼの畔をピンク色で彩ります。ヒガンバナの燃えるような赤とは違い、ピンク色に淡くブルーの色味が入り、大ぶりでありながら、どこか涼やかな印象もあります。

★キキヨウ
夏の初めから咲きはじめ、秋まで花が続きます。万葉の時代から栽培されており、人の身近にあった植物のひとつ。白花や八重咲もあり、江戸時代から品種改良が行われていた記載があります。本来、日当たりの良い野原などに自生する植物ですが、現在、自生種はかなり数が少なくなっています。(公園内には、珍しい自生種も存在します)。無料区域の谷あいや、水景園内の里棚田などに株があります。

今回は、晩夏を彩るピンク~紫色のお花たちをご紹介しました。残念ながら、公園にはお越しいただけませんが、季節の花々が少しでもおうち時間を彩ってくれれば幸いです。


< 過去の記事 公園よろず手帖 トップ 新しい記事 >