「枯山水プログラム」は、折からのインバウンド需要を契機に開発したアクティビティで

外国の方々を対象に庭園文化に触れていただく機会を提供するものです。

さらには、中学生らによる課外授業などにも取り入れ、「日本の伝統文化」をどのような形で

伝えることが出来るのか、プログラムの体験をとおして一緒に考える

教育の場としての一面もあります。

 

今回は、その枯山水プログラムについてご紹介いたします。

枯山水の庭(イメージ)

 

【プログラムの特長】

日本庭園を学ぶうえで「枯山水」は優れた教材といえます。

・利点として、場所や服装の制約がなく、時間も数十分から実施が可能であることが挙げられます。

・使用する資材は、箱、石に砂と、手に入りやすいものばかりです。

・枯山水の庭だけではありませんが、限られた敷地や資源を用い工夫しながら、優れた庭を創造したり

 空間を活かすスタイルもまた、日本ならではの特徴といえます。

・砂と石で構成される庭に取り入れられた「間」や「気勢」、そこから日本文化に宿る「簡素の美」や

 「余白の美」に触れることが出来ます。

・枯山水は、作り手である禅僧の「心」の在りようを「枯山水」という空間に置き換え、表現したとも

 いわれています。

・プログラムを通じて、自分の心がそこにあらわれる体験、すなわち自分を見つめなおす時間を味わう

 ことができます。

 

【プログラムの内容】

文章にすると、内容はとても簡単。

砂をならす→石を選ぶ→石を置く→砂紋をひく、で完成です。が、このプログラムの醍醐味は、

作庭の意図やイメージなど、参加者自らがお互いの作品を評価し合うところにあります。

 

1.砂をならす

まずは砂をならして、心穏やかに。

砂に触れ、その姿かたちを変えることは、子ども時代の「砂遊び」、本能的な喜びに結び付くのかも

しれません。

砂地を平らにすれば、自然と心も落ち着いてゆきます。

 

2.石を選ぶ

プログラムで使用する石は普通の石ですが、色や形は様々でどれ一つ同じものはありません。

目に付いた、具合がよさそうな石を選んでもらいます。選ぶ石の数は7つ、奇数で場のおさまりがよい

個数です。

   

 

3.石を置く

置き方は気の向くまま、作庭者が最も落ち着く位置やバランスを感じながらも

自由に置いてもらいます。

 

プログラムでは、コツとして以下の要素をお伝えしています。

・まず3個を置いたうえで2個、さらに2個と置いていくと、バランスがとりやすくなります。

最初の3つ

  さらに2つ  

    最後に2つ

 

・要(かなめ)となる石を決めて、それぞれの関係性を構築していけば収まりがよくなります。

 

・植栽などの配置において、空間をつくり奥行きを感じさせる「不等辺三角形」によるデザインの紹介も。

 

・気勢についても話題に挙げています。

「気勢」を明確に説明することは難しいのですが、物(形のあるもの)の勢い、方向性。

また、それらの状態から受ける居心地の良さであったり圧迫感だったり…、といったところでしょうか。

 

 

4.砂紋をひく

砂紋の世界も奥深く、漣(さざなみ)、片男波、青海波など様々な種類が存在しますが、プログラムでは

石を置くことに主眼を置き、水面を表現したり箱庭の表情を豊かにするために楽しんでいただきます。

 

5.評価しあう

出来上がった作品(庭園)は、皆で鑑賞。どのような意図や気持ちをもって石を置いたのか、などを説明

し合います。考えが明確な方も、そうでない方も、それぞれが他者に自作品を説明することは、表現行為のひとつ。

プログラムにとって最も重要な要素(目的)となります。一方的な解釈や良し悪しの評価は一切なしです。

限られたスペースに、限られた資材(7つの石ころ)といった制限があるにも関わらず、作品は多種多様。

私の経験上、これまで一度として同じ作品を見たことはありません。

 

【プログラムの様子】

おひとり様から、数十名まで、気候や季節によって、開催場所も変えています。

 

  

 

【枯山水は日本だけのものではない?】

「自分の故郷の景色を浮かべて作った。」とは、オーストラリアから来たお客様の言葉。

残念ながら作品写真は残っていないのですが、あとで調べたところ、その景色とは「12使徒の岩

(The Twelve Apostles)」というオーストラリア南東部の海岸沿いにある景勝地でした。

遠い日本で彼が思いを馳せたのは、彼が持つ原風景。まさに山水の世界。

枯山水や日本庭園にまつわる美意識への理解は、なにも日本人だけの専売特許ではない、

ということを学んだ瞬間でした。

 

【ある中学生の作品】

バスケットボール部に所属する中学生は、チームポジションを庭に表現しました。なので、使う石は5つ。

自分を含むプレイヤー(人々)を石に見立てる行為、彼女らしい選択だと思いました。

  

 

【公園にみる枯山水的景色】

物の配置や間隔、バランスの妙を「枯山水的」と表現するならば、ここ記念公園の中でも多く見つけることができます。

▲橋の下でみつけた石の並びは、流れ着いたままの配置。いずれは変わる、一期一会の景色。

▲池中央に残る木の根っこは海に浮かぶ岩礁のよう?今ではさっぱりと朽ちて無くなってしまいました。

▲苔の上に落ちて散らばったイガグリ。それぞれには、示し合わせたような「間」を感じます。

▲ヒガンバナの記録写真も、「枯山水的」視点でみてみると・・・。

 

【さいごに】

プログラムをとおして参加者の皆様にお伝えしているのは、不均整なものや割り切れないものなどを用いて

調和をもたらすことの面白さ。そして、その調和は必ずしも均整のとれた完全無欠のものではなく、

混沌と秩序は相互で隣り合わせ…。

様々な人々と出会い、また、その多様な価値観に触れることが出来る…

枯山水プログラムは私にとっても大切な学びの場となっています。

 

 

 


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