2024年になって、お正月気分がまだどこかに残ったまま、あれよあれよという間に時間が過ぎました。
松の内があけてしまいました。
公園では正月飾りをそろそろ片付け、次の行事への準備が始まりました。
節分のしつらえ
赤鬼・青鬼が柊の山に…痛そう…
地方によって、季節のしきたりはいろいろです。
先のみどころ紹介ではしめ飾りに詳しいスタッフがその地域性をご紹介しました。
今日は新年から節分ごろにかけての、ある昔話をご紹介します。
※記憶に頼った記述であり、不確かな内容であることをご了承ください。
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昔々ある村の入り口に塞の神が立っていました。
塞の神とは、村境などで、外部から悪いものが入ってこないように守ってくれる神様です。
そしてその近くの家には怠け者の男がいました。
男には嫁さんとこどもが一人いましたが、博打ばかりして一向に働こうとしないのでした。
さて、10月になると全国の神様が出雲の国に集まって寄合をします。
この塞の神も出雲を目指して旅にでて、10月の終わりに帰って来るのでした。
そして、12月になると入れ替わりに、諸国の疫病神が出雲に集まるのでした。
12月の朝、この村の疫病神は塞の神に出発前の挨拶にきました。
そして「来年の2月8日に帰ってくるから、それまで来年の災難を記した帳面を預かってくだされ」と言います。
中身をちらりと見てみると1月●●日に怠け者の家が火事になると書いてありました。
疫病神は慌てて「読んではいけません」と念を押して旅立ちました。
塞の神は火事の事が気になって仕方ありません。
まだ小さなこどももいるというのに、火事になるとは不憫でした。
しかし、塞の神の言葉は人には聞こえないのでした。
いよいよ翌日が火事の日という夜、塞の神はなんとか伝えようと、男の夢の中で、明日火事になると伝えます。
ところが男は、火事の夢は縁起が良いと言って、意気揚々と博打に出かけました。
その日の夜、男は遅くまで帰ってきませんでした。
嫁とこどもはすでに寝ています。その家から煙が上がりました。
塞の神は焦って、嫁の夢枕に立ち、嫁を起こします。
目覚めた嫁は火事に気付き、なんとかこどもと逃げ出すことができました。
家が火の手に包まれたところへ、男が慌てふためいて帰ってきます。
嫁とこどもが無事なことを知って、男はほとほと安堵しました。
そして、男はこれに懲りて、博打をやめました。
2月8日、この地域では餅を藁で作った馬につけて塞の神にお参りします。
そして、疫病神が出雲から帰ってくるこの日に、家に入ってこないようにネギや辛子を火にくべて煙をたてるのが習わしでした。
帰ってきた疫病神は煙にむせ返りながら、塞の神のところに来て、帳面を返してもらいます。
しかし、塞の神は帳面を白紙のものとすり替えてしまっていました。
このおかげで、この年、この村には災難が起こらなかったそうです。
昔はこのように土地ごとに神様がいて村を守ってくれていたそうです。
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塞の神様という呼び方を、私は昔話で知りました。
道祖神と言う方が若干聞きなじみがあるかもしれません。
昔話で描かれる塞の神様は小さなお地蔵さんのような石像が多いように思います。
もしかしたらお地蔵さんだと思っていたものには塞の神様が含まれていたのかもしれません。
古いしきたりには、こういうお話しが付きものな気がします。
なかなか慌ただしい現代ではこういう習わしをしなくなりがちですが、思い出したのを機にやってみれば、鬼や疫病神から塞の神様がひっそりと守ってくれるかもしれません。