12月になると気温も下がり、秋の間にぎやかにしていた虫の姿は消えてしまったようにも感じます。
しかし、虫たちは様々な姿で冬を乗り越えていたり、冬の寒さに負けずたくましく生きているのです。
「虫の冬越し」といってもその様式は色々で、成虫で冬を越すものや蛹(さなぎ)でじっと春を待つもの、
卵で寒さを凌ぐものなど実に多様です。
また、冬越しをしている間はほとんど動くことができなくなるため、敵に見つからないことも重要です。
テントウムシのように木の幹の割れ目に潜り込んだり、くるりと巻いた葉の中に身をひそめたりとそれぞれに工夫を凝らしていますが、
枯れ葉そっくりな姿で落ち葉に紛れるチョウやガはじっとしていると一筋縄では見つけることができません。
多くの虫たちが冬越しをする一方で、寒い時期にだけ活動する変わった虫もいます。
中でも代表的なものは、晩秋から早春にかけてみられる「フユシャク」と呼ばれるガの仲間です。
12月のはじめ頃、日差しの温かい林床にヒラヒラと飛ぶガはクロスジフユエダシャクです。
このグループの大きな特徴は、メスの特異な姿にあります。
ほとんどの虫が成虫になると翅を獲得するのに対し、フユシャクのメスは成虫になると翅が全くなくなったり、
痕跡程度に消失しています。一見するとクモのようにも見えるその姿には、寒い冬を生き抜く工夫が詰まっています。
翅がなくなった分、体の表面積が少なくなり熱を奪われにくくなっています。
これは寒い時期に活動する虫にとって、大変有利な仕組みです。
さらに、メスはフェロモンと呼ばれる化学物質を放出してオスを呼び寄せるため、翅がなくても繁殖相手に出会うことができるのです。
冬になると生き物たちはひっそりと息をひそめてしまいますが、落ち葉の下や木の葉の裏、草の株本や手すりのすきまなど、
様々な場所で観察することができます。冬の公園で虫探しに挑戦してみませんか?