二十四節季「白露」の更新に合わせ、こちらのページで水景園のみどころを紹介いたします。

 

====================(2023.9.8更新)

「白露」

草木に朝露が輝き、次第に心地よい気候を迎える頃です。夜のうちの大気が冷やされて露を結ぶ光景は、暑さからの解放を告げるかのようです。

近年では地球規模での環境変化で、四季の訪れも従来通りにはいかないようです。そんななかでも公園内の植物・生物に目を向けると、次の季節へ向けて刻々と命が育まれています。

それでは水景園内から一足早く秋の便りをお届けします。

 

■コムラサキ(ムラサキシキブ)とシロシキブ

これからの散策シーズンにオススメしたいのが、コムラサキとシロシキブです。水景園の紅葉谷などで小さな実をたわわに付け、秋の訪れを知らせてくれます。

葉の付き方は対生(同じ部分から葉が左右に付く状態)をしており、よく観察するとシソに似ていることがわかるでしょう。コムラサキ、ムラサキシキブはシソ科の植物で非香性ですが、アオジソやアカジソ、ハッカ、そしてラベンダーやローズマリーなどの香り高いこれらと同じ科の仲間です。

「白露」という時候に相応しい、秋の植物です。

 

■シュウメイギク

水景園受付あたりや観月楼の餌やりデッキを彩るシュウメイギク。白や薄桃色の花は、日本の秋の風景によく合います。キクと言えども、キンポウゲ科でアネモネ属に分類されます。群生する特性があるのは、地下茎を伸ばして繁殖するためです。

また、花弁のようにみえる部分は萼で、キンポウゲ科の植物の多くが、その特徴を持っています。いまはまだ蕾がちです。

 

■カツラ

水景園の餌やりデッキ(観月楼にあるデッキ)付近には、ハート型に似た葉が特徴的なカツラがあります。これからの季節、はじめて訪れた方のなかには「甘い香りがする」とお気付きの場合もあります。それは、カツラの葉が乾燥した時に発するマルトールという香気成分によるものです。

この記事を書いている9月1日には既に、ライムグリーンからクリームイエローへと葉がグラデーションに変化を見せていました。葉から良い香りが発するのは黄変し、乾燥が進んだ10月頃になってから。秋の深まりをどうぞ、お楽しみに!

 

■キンカンの花

ミカン科の果樹の多くは5月に花を付けますが、キンカンは夏真っ盛りの7月から今の季節までが開花期です。葉の付け根にひっそりと付く白い小さな花は萼も花弁も5つで、数本ずつ結合した20~25本の雄しべがあります(花弁は5弁が多いですが、なかには写真のような6弁のものも…)。

そろそろ花期は終盤ですが、清楚な花をお楽しみいただけます。10~11月頃には熟れはじめる果実と常緑の葉の色彩のコントラストも鮮やかで、長期間鑑賞できるオススメの低木果樹です。

 

■ナンバンギセル

見落としてしまいそうなほど、ひっそりと花を付ける「ナンバンギセル」。その名が示すように開花時には花首がお辞儀するかのように曲がり、煙管を思わせます。

昨今話題の植物学者・牧野富太郎(1862-1957)もナンバンギセルの同属、オオナンバンギセルを採集・写生した記録が残ります。それは1880年7月22日、19歳の時でした。目を惹きつけるその姿は、古く『万葉集』にも思草(おもいぐさ)として名を連ねました。

ススキやイネの根に寄生し、それらから吸収した栄養分をもとに生育する一年草のナンバンギセル。水景園内ではごく限られた場所に育ちます。見つけられたら、ぜひ記念に撮影を!

 

これからの季節を彩る植物は、水景園受付で販売している『花暦ガイドマップ(秋~冬)』、『紅葉ガイドマップ』(1冊/各100円)でご確認いただけます。

澄んだ空気のなか、これから深まるけいはんな記念公園の秋をどうぞお楽しみください。

 

※公園の植物採集は禁止されています。

※落ちている枝・葉などの持ち帰りは構いません。