寒さの厳しい冬になると、多くの木々が葉を落とし、色鮮やかな花々もすっかり少なくなってしまいます。

そんな中で、一際目を惹く身近な花といえば、ツバキやサザンカではないでしょうか?

今回は冬に見頃を迎えるツバキとサザンカとそれを取り巻く生き物について、少し掘り下げて紹介します。

 

 

そもそも、なぜこれらの花は厳しい冬に花を咲かせるのでしょうか?

コケやシダを除く植物が子孫を残すには、多くの場合は種を作る必要があります。

種をつくる植物のほとんどは、受粉に必要な花粉の運搬を動物(特に昆虫)に頼っているとされており、

綺麗な花や良い香りはこれらの動物を呼び寄せるためのものです。

 

つまり、ツバキやサザンカは、冬の間にも花にやって来てくれる「だれか」のために綺麗な花を咲かせていると考えて良さそうです。

屋上棚田などに見られるサザンカ

巨石群などに見られるツバキ

 

 

年の瀬が迫る12月に外で仕事をしていると、大きな羽音とともにスズメバチがサザンカの花を訪れるのをよく見ます。

小さなアリやコガネムシの仲間も頻繁にサザンカにやってきては、花の奥でごそごそと蜜や花粉を食べています。

どうやら、花の少なくなる時期に冬越しのための栄養をつけたい昆虫がサザンカに集まってくるようです。

これらの昆虫は蜜や花粉をもらう代わりに、体に花粉をまとって花から花へと動き回り、花粉を運ぶ手助けにもなっています。

サザンカは、冬の貴重な栄養源のひとつ

 

年が明け、節分の準備にとりかかる頃に見頃を迎えるのはツバキです。

この頃になると冬の寒さも増し、ほとんどの昆虫は冬越しのためにじっとしています。

厳しい寒さの中でも活発に活動し、花にやってくるのは鳥たちです。

 

身近な種類で花にやってくるのはメジロやヒヨドリで、特にメジロは花の蜜を吸うのに適した体のつくりをしています。

くちばしを花の奥底に差し込んで蜜を吸い、花粉だらけの顔で他のツバキを訪れると、こちらも花粉を運ぶ手助けをしたことになります。

花にしがみつき、蜜を吸うメジロ

舌先がブラシ状になり、蜜を吸いやすい

 

このように昆虫の活動が少ない冬に咲くツバキやサザンカは、教科書的には主に鳥が花粉を運ぶ花とされています。

しかし、野外で観察していると、その説明に違和感を感じることがあります。

本当に両方が鳥に好まれる花ならば、共通した特徴を持っているはずです。

そこで、ツバキとサザンカの花に注目して、その違いを調べてみることにしました。

 

鳥に好まれる花にはいくつかの共通した特徴があります。

 

①赤系の花が多い

②丈夫な花びらをつける

③薄い蜜を大量につくる

④奥まった花の形をしている

⑤香りはほとんどない

⑥虫が着地しやすい場所がない

 

ほかにもいくつかの特徴がありますが、ここでは上の①~③につについて比べてみました。

ツバキの花:黄色い花粉は少なく、花の奥に光っているのはしたたるほどの蜜

サザンカの花:黄色い花粉はツバキより多く、蜜はあまり見えない

これらの他にも、花粉の量にも違いがあるなと感じました。

虫は花粉も食べますが、鳥は花粉を食べません。

サザンカが本当に鳥に来てほしいならば、花粉をつくるエネルギーを鳥の餌となる蜜に投資した方が良いような気もします。

よく似たツバキとサザンカですが、しっかり観察すると他にもいろいろな違いがありそうです。

 

あくまでも個人的な感想で、もっとたくさんの数を調べる必要があるのは承知の上ですが、

「虫向けだけど、鳥もやってくる花」ではないのかな?という印象をもちました。

 

これについては研究者のあいだでも賛否両論で、はっきりした結論は分かっていませんが、

身近な花や生き物もよく観察すると新しい発見につながるかもしれませんね。


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