けいはんな記念公園では、秋が深まる頃に庭や里山の柿を使って事務所の軒下に干し柿を作ります。
鮮やかな柿色から艶のある飴色へと変わっていく干し柿は、秋から冬への移ろいを感じさせる里の景色のひとつです。
今回は公園の干し柿ができるまでと、その作り方について紹介します。
柿は正式には「カキノキ」と呼び、日本をはじめ中国や韓国などの東アジアに広くみられます。
また、柿を意味する英語のpersimmon(パーシモン)は、アメリカの先住民の言葉で「干した果物」を意味するpessamin(ペッサミン)が語源となっており、
先住民がアメリカガキを干して保存食にしていたことに由来します。
このように様々な国で柿を干して食べる文化が根付いており、日本でも従来は冬の保存食とされていたものが平安時代には菓子として作られるようになりました。
古くは枝ごと天日で乾燥して作られていた干し柿は、実を串刺しにして干す串柿となり、明治以降には現在のようなヘタを吊るして干す方法が一般的となっています。
干し柿を作るには、まず柿の実を準備しなければいけません。
里棚田近くにあるカキノキは毎年大きな実をならせるので、吊るし柿にすると見ごたえがあります。
すべての実を収穫せずに少し残してあるのは、冬にやってくる鳥たちへの分け前です。
収獲した柿は枝から切り離し、ヘタをT字に残しておきます。また、柔らかく熟したものは水分が多く干し柿には向きません。
完全に熟す前の硬い実を使うのが、上手に干し柿を作るための第一歩です。
ヘタを残した実は、包丁やピーラーなどで綺麗に皮をむきます。専用の皮むき機もあるようですが、
私は作業効率が良く安全なピーラーを愛用しています。
また、皮をむいた実を熱湯に10秒ほど漬けると表面の殺菌ができるので、干す工程でカビが生えにくくなります。
下処理が終わった実は、ひもに吊るして風通しの良い軒下などに干します。
ヘタにひもを結んでも良いですが、ポリプロピレンひもの両端を実が落ちないように結び、
その上をほどいてヘタを差し込むと簡単に吊るし柿を作ることができます。
干してから2-3日は水分が多く、カビやすいので出来るだけ晴の続く日を選ぶことも重要です。
また、この時に実と実が付いてしまうと乾燥しないので、実をそれぞれ離して干すことも大切です。
干した後はカビ予防のため定期的に焼酎を吹きかけ、
1週間ほど干して表面が硬くなったら実を優しく実を揉むとまんべんなく甘い干し柿を作ることができます。
2週間ほど干すと水分が抜け、甘味が濃縮してゆきます。
また、柿の渋みであるタンニンが水溶性から不溶性になることで、渋みを感じずに甘味だけを感じるようになります。
長い時間と手間暇をかけ、ようやく干し柿の完成です。
柔らかい食感が好みの方は2週間ほど、しっかりした食感が好みの方が3週間~1ヵ月ほど干すと良いでしょう。
昔の人たちの暮らしの知恵を感じながら、晩秋のしつらえをお楽しみください。