公園西側にひろがる広場には自由に遊べる多目的な空間の「芝生広場」や遊具が設置されています。運動やピクニックに最適な場所といえますが、マーケットなどの大型イベントも開催されています。春には約300本の桜が咲き、夏から秋にかけて池や小川で水遊びを楽しむ方々でにぎわいます。
さて、この「芝生広場」には設計上の大きな特徴があります。それは里山の棚田をモチーフとしていること。4面の異なる形の広場が東に向かって段状に連続していく空間に表現されています。 また、精華大通りなどの周辺から約3メートル低い位置にあって林などの緑に囲まれていることも棚田の景色をつくるうえでの重要なポイントといえます。
棚田の魅力
棚田は日本の重要な「文化的景観」の一つとして、様々な場所でその価値が見直されています。棚田をはじめ、里地里山に残されている人々の生活や風土に深く結びついた地域特有の景観を大切にする想いは けいはんな記念公園のコンセプト「文化を大切にした水と緑にあふれる公園」にもつながります。
「落とし口」を再現
通常、棚田への水入れでは、水は上の田から順番に入れられます。上の田が満たされると畦を切って作られた水路である水路を通じて下の田へ水を引くといった「田越し」と呼ばれる方法がとられますが、その水路を「落し口」といいます。 この「落とし口」が見事に再現されています。
「落とし口」に見立てた通路。自然石や切り石が使われています
畦畔を再現
田んぼには必ず畦(あぜ)があります。畦は田んぼの境界であり通路にもなります。主として水漏れを防ぐ役割があるのですが、毎年田植えの前には畦を作り直します。前年のあいだに低くまた弱くなっているからです。 畦を高くして側面を固める「畦塗り」という作業です。
畦には畦豆(黒豆)やヒガンバナなどの救慌植物が植えられているほか、植生学において「畦畔草原」とあるように、草原性植物が生育する貴重な場所でもあります。昔は農作業の合間に畦に座って休憩したという話も残るなど、畦は棚田を語る際には欠かせない構成要素のひとつなのです。
ここ芝生広場では、畦を表現した土手によって空間を仕切ることで生まれるリズム感を楽しんでください。
段差は約70センチ。地上からの盛り上がりと蛇行線によって「柔らかさ」を表現
棚田に沿った畦豆
秋の棚田はヒガンバナの景色
ちなみに、芝生広場の広さは約2ha。10aあたり500kgのお米が収穫できるとしたら、10トンのお米が収穫できることになります。
棚田で遊ぶ疑似体験
多くの棚田が立地する山や丘陵を背後に負う「山の辺」の景観には、人間(日本人)に心理的な安心感・安定感を与えるといわれています。
大勢が遊ぶ空間としては周辺が見通せる広大な広場(スペース)も魅力的ですが、緑に囲まれ守られているような空間のなかで、棚田の要素がもたらす景観の柔らかさや居心地の良さを、この芝生広場で感じていただければと思います。
人もテントも段々に…
そのほかに表現されている里の景色
展望東屋(休憩所)小さな山寺をイメージ。屋根の形状に注目!
実は農家をイメージしている大あずま屋
茶畑に見立てたツツジの刈り込みで里山景観を演出(南山城はお茶の名産地ですね)