秋が深まり、紅葉・黄葉が美しくなってきました。

公園では、紅葉谷はまだ見頃ですが、徐々に頂上部より散り始めつつあります。
皆さまは今年の紅葉をどこかでお楽しみになりましたでしょうか。

 

真っ赤へと色づきゆく紅葉のグラデーションは夏の余韻を引くような元気が出る鮮やかな色合いを見せてくれます。赤く染まり切った後は灯りがともったような赤から少し落ち着いた赤になり、やがて落葉して地面を彩ります。いずれも、れぞれに味わいがあり、自然にしか出しえない色彩の移ろいでお庭を彩ってくれます。



 

紅葉谷の紅葉が一段落する頃から薄氷が張る手前までは、芽ぶきの森が黄~橙に黄葉します。澄んだ空に明るい黄橙の森が大変美しい季節です。森を歩けばガマズミやソヨゴなど、紅い実を付ける樹々が目を楽しませてくれます。

 

季節を愛でる、色彩を楽しむという感覚は人間ならではのもの・・・と、ふと思うことがあります。他の生き物にとっては視覚情報も聴覚情報も、生きるため、身を守るための必須情報で、私たちのように観賞の対象ではありません。自然界の生き物は進化の過程で生き残りをかけて必要なものを優先して残し、どんどん省エネ・効率化を経て今の姿と機能があります。そう思うと、私たちには「必要な無駄」と「贅沢な感覚」がたくさん備わっていると思われませんか。

色や光というのは皆様ご存知のように電磁波の一種で、その波長によって特性が異なります。ヒトの目で見えるおよそ400~800nmの波長の電磁波を可視光といいます。主にプリズム(簡単にいうと7色の虹)の色合いをグラデーションで感知することができ、波長が長い(800に近い)と赤に近づき、短い(400に近い)と紫に近づきます。ヒトの眼には色を感じるセンサー(錐体)が赤・緑・青と色域波長ごとに3種類あり、それぞれの光の強さが総的に認識されて「色」が見えています。これが光の三原色です。可視光の外側(可視光波長の領域外)に長波長の赤外線やもっと波長の長い電波、短波長の紫外線やもっと短いX線などがあります。

蛇足ですが、絵具やインクの三原色も光の三原色からできていて、赤い光を反射せず吸収する色は「シアン(水色)」に見え、緑色の光を吸収する色は「マゼンタ(赤色)」に見え、青い光を吸収する色は「イエロー(黄色)」に見える、という仕組みです。

 

 

では、私たちの色覚と他の生き物との違いをちょっと見てみましょう。

 

●犬や猫

錐体が青と赤の2種しかなく、認識できるのは青と緑(黄)とその中間と言われています。
また、意外なことに耳や鼻が発達しているので、色覚はそれほど優れていないのだとか。
色センサーの錐体は少ない代わりに、桿体という感度の高いセンサーがあるため、弱い光、暗闇でも物を認識しやすく、動体視力も高いと言われています。

 

●チョウやハチ

思った以上に色の区別が細かくできるそうです。
種によって見える色域は様々ですが、ミツバチは紫外線が見える(認識できる)ものの色としては青、緑、黄しか識別できないといいます。ただ、黄色には特に敏感に反応できるので花の場所は特に目立って見えているらしいです。
アゲハチョウは光のセンサーが6つもあり、そのうち4つで色を見分けているそうで、ヒトに近い、またはヒト以上の色合いが見えていると言われています。モンシロチョウは雌の翅だけ紫外線を強く反射するのでチョウ同士ではとても光っている、目立って見えているらしいです。そしてミツバチ同様に黄色をしっかり識別できるので、やはり花はよく見えているということです。

 

●鳥

鳥も4種類のセンサーを持っていてヒト以上に多くの色が識別でき、ヒトにない4つ目が紫外線領域を感知できるので、鳥も紫外線が見えているそうです。そしてさらに、色の話からは離れますが、鳥たちは磁界が見えるので移動ルートを間違わないだけでなく、中心窩(ちゅうしんか)という特殊な細胞が網膜にあり、超高精細な視野を得ることができるそうで、視力という意味では動物の中でもダントツです。ワシやタカは1500 m上空からネズミなどの小動物が見えるそうです。

 

●爬虫類

爬虫類も鳥と同じ4種類のセンサーでヒトよりカラフルな世界で暮らしています。また、眼のほかに「松果体」という第三の眼でも色を認識することができるそうです。ヤモリについては、夜間・暗がりでも色を見分けられる特殊な能力があり、暗闇で虫を捕食するのだとか。

 

こうしてみると、自然界にもカラフルな視界をもつものがいますが、それを美しいとかきれいと感じる能力はなく、その必要も持ち合わせていません。季節や自然の風景に彩りを感じ、味わうことができるのは私達ヒトの特権のようなもの。

最近は私を含め、景色のきれいなところに行くとついスマートフォンで写真を撮りたくなり、撮り始めるとスマホの画面ばかり見て景色を追ってしまうこともあります。けれど、ヒトの眼ほど優れたレンズはないのではないでしょうか。カメラのレンズでは写しきれない色あいと空間をヒトの眼は感知しています。
「本当はもっときれいなんだけど」「もっと鮮やかで豊かな色合いなのに」と写真を撮りながら思うこともあるのでは。

せっかくの風景、記録に残る写真より、時には記憶に残る自分の眼で楽しむことも忘れないようにしたいな、と思うこの頃です。

 

 


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