今回は水景園の中にある「野外アート作品」のお話し。

当園には8つの野外アート作品が常設されており、公園の散策とともにアート鑑賞が楽しめます。

その内の一つ、水景棚近くの小さな丘に立つ「風の門-宙-」は、京都の陶芸家 川上力三氏による作品。

この作品、実は寄贈いただいたものなのです。

 

~風ノ門 -宙- ~

2005年秋、「滋賀県立陶芸の森(甲賀市)」創作研修館のアーティスト・イン・レジデンス(滞在制作)によって完成した陶彫で、同タイプの2作品が制作されました。                    (この事業は今でも継続されています。)

この2作品は信楽や京都の博物館で披露されたのち「陶芸の森」「けいはんな記念公園」にそれぞれ寄贈されました。

両施設は南西と北東、直線距離で約30kmの位置関係

それぞれが対峙する方角にあり、2つの作品で空と水の距離感を壮大なスケールで表現しているのだとか。(「記念公園」の水、「陶芸の森」の空ということでしょうか?想像が膨らみます…。)

 

けいはんな記念公園(水景園) 

陶芸の森(陶芸館前) 

5つのパーツを接合した造形で、陶芸の森の作品は「高さ/幅 約3m」。一方、当園にある作品は「高さ/幅 約2m」と、姿かたちはよく似ていますが大小があって…さながら兄弟のようであります。(「陶芸の森」さんとのご縁も感じますよね。)

 

当時の記録から…

作品を当園にお迎えしたのは2006年。作品寄贈に合わせてセレモニーのほか、ギャラリーでの展覧会や記念講演が開催されました。

右から2人目が制作者の川上氏

当時のチラシ

 川上氏の「土練機を使うのがいやで、すべて自らこねた…」との制作談を聞けば、陶彫作品の特徴でもある「温かみ」をより一層強く感じますよね。                            

 肌にのこる「手業の痕跡」も作品の味わい…

 

設置場所については「庭園内の雰囲気や作品自体の存在感などを念頭に「門」としての性格を持たせるために風景が変化する地点を選んだ…」ことが公園の記録として残っています。

「長くて遠い道、人は限りなく門をくぐりぬける。様々な想いを胸に秘めて…」「人生に何度も訪れる始まりと終わり」という作品コンセプトから、庭園内における「風景への入口」「風景の変わり目」というイメージへの展開がおこなわれました。

設置場所は丁寧に検討された。(里と山との境界、景色が変わる場所を選定)

 

公園と仲良し「パブリックアート」

公園とパブリックアートに共通するのは「公共性や文化性」。両者は相性がいいものとされています。 

パブリックアートがもたらす「日常的な非日常性」が、当園においては日本庭園を回遊する際のお客様にとってのスパイス(適度な刺激)にもつながると考えています。 

皆さんも公園で野外アート作品に出会ったら、まずは作品そのものを、そして作品が存在することによって生まれる空間の魅力を見つけてみてくださいね。

記念公園:葉桜の季節を迎える4月下旬。左に見える園路は里山への出入り口。「門」は路傍の道標のようにも見える。

陶芸の森:年明けの晴天日に。高台で気持ちよさそうに鎮座する姿が清々しい。美しい山並みの向こう側には甲賀の市街地がひろがる。


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