今はとても身近になった写真の世界、記録として記憶として気軽に撮影できるようになった現代の写真の、これまでの役割や変遷をたどりながら、本日よりギャラリー月の庭で開催のグループ写真展や出展の写真家さんについてご紹介します。

 

写真の登場は16~17世紀ごろ、わかりやすく言うとピンホールカメラのような「カメラ・オブスキュラ」というものが始まりとされています。それより前はどうしていたか―。絵画です。人は昔から見たものや感じたものを形に残すことに力を注いできました。前史時代の壁画などはその始まりかもしれません。歴史の中でも何かを記録する時、そこにいない人に伝える必要がある時、絵画という手段でその状況を残してきました。過去の「アート」の概念がラテン語の“アルト”=技術を意味していた通り、絵画はいかに写実的にリアルに残すか、でした。写真の登場でこの役割を徐々に写真に譲り、絵画は自由な表現や作家の内面・思想・発想という部分にその意義を転換していきます。

写真技術はピンホールカメラから銀板写真に到達すると人物を撮影するために使われます。幕末の日本にも伝来しており、よく教科書に載っている坂本龍馬などの写真がそれです。その後、フィルムカメラが発明されます。フィルムカメラは撮影時間を短縮し、写真を量産することを可能にした画期的な発明でした。フィルムの形状は時代によって違いますがカメラ=フィルムの時代は150年近く続きました。2000年代になって、デジタルカメラが台頭し、その場で撮影した画像の確認ができ、不要なデータは削除可能などより便利で容易なカメラへと姿を変えました。カメラ付き携帯電話、スマートフォンの普及は、一層幅広い世代に撮影が身近となり、スマートフォンがカメラの役割を大きく担うようになりました。

それでも写真愛好家にとってはやっぱり一眼カメラで、年々軽くて高性能な一眼カメラが新しく発表されています。

歴史的変遷からも写真は大きく絵画部門に分類されることが多く、アートとして取り上げられています。アート写真なのか、記録写真なのかは、個人の感覚にもよりますが、大切な瞬間を残したい、ということに違いはありません。2度と巡ってこない一瞬を切り取るその映像は、ファインダーを覗いた撮影者だけのものから「写真」として残されることで共有・共感できるシーンにすることができます。これが写真の魅力なのではないでしょうか。

 

         

今回企画したグループ写真展は、恒例で開催している公募写真展ではなかなか見えてこない、「写真家さんの見ている世界」を通して写真の魅力や面白さ、写真も表現でありアートであるという一面をご紹介するものです。公募した結果、第一回目はお二人が日常に目を向けて、様々な想いをもって撮影された作品群で『杉岡克典・前田恵美 二人展』として開催します。

お二人とも、この二人展が初めての本格的展覧会だそうですが、公園の公募写真展では入賞・受賞の常連さんです。今回の開催に際し、写真について少しお話をうかがいました。

  • 写真をはじめられたきっかけは?

   杉岡氏:60歳半ば頃、老後の趣味にと絵画と写真を勉強しはじめたんですが、写真のほうが
       あっていたようで。写真はカメラが撮ってくれるし(笑)。
   (※絵画を学ばれたせいか、杉岡さんのお写真には絵画的な構図や色合いが感じられます。
    展示写真だけでなく、ポートフォリオもぜひご覧ください)

   前田氏:大学生の時にアルバイト代で初めて一眼レフカメラを買って。まだフィルムカメラの時代
       なので、旅行などビッグイベントの時にだけ撮っていました。

  • 本格的に撮影活動や公募出品をするようになったのは?

   杉岡氏:のめり込んだのは、初めてこの公園の公募展に出品して受賞したことがきっかけかも。
       それ以降も公募展はいろんなところに頻繁に出品していて、入賞・受賞させてもらって
       それが励みになってますね。面白くなってしまって、いわゆる「レンズ沼」に今は
       すっかりはまっています。

   前田氏:子どもが小さな頃はコンパクトデジカメでイベントの時に撮っていたのですが、2019年の
       誕生日にミラーレスを購入して撮影してみた時に、思っていた以上にきれいな写真が
       撮れて感動して。そこから写真関係の本を図書館でひたすら借りて勉強しました。特に
       マクロの世界は肉眼で見るのとは違う世界がそこにあること、それを取り出せることが
       嬉しくて。

  • どんな時に「写真って楽しい!面白い!」と思われますか?

   杉岡氏:一つの場所で粘って撮影することも多いんですが、そんな中で偶然にいい瞬間に
       出会ってシャッターを切る時は楽しいですね。それと、その写真を現像というか
       プリントしてみた時。景色だと私は人をちょっと入れて撮るのが好きですね。
       人が入るとドラマができるでしょ。写真に物語が生まれるのが面白い。

   前田氏:撮影する対象は感動したもの、きれい!と思ったものなのですが、意外と朝のお散歩
       だったり身近なところが多いんです。近くで美しいものに出会えることも嬉しいし、
       その美しいものを探している時も豊かな時間で幸せです。そんな時間の中でシャッターを
       切る瞬間がとても楽しいですね。

  • 今・これからの目標ってありますか?

   杉岡氏:ドラマチックな写真を追求していきたいですね。写真って静止画でしょ。でもその中に
       ドラマがあって時間のながれがあって。そんな写真をこれからも撮っていきたいです。

   前田氏:本当は「写真展をすること」が目標だったんです、でも今回叶っちゃいました。
       もう一つは、写真を通して見てくださる方を元気にできたら嬉しいですね。
       私の写真や言葉でホッとしたり元気が出たと思ってもらえたらそれが一番だし、そう思って
       もらえることが私の元気につながってます。

 

お二人とも、温かなお人柄がそのまま写真に表れているような作品を展示いただいています。会期中はお二人に会える日も結構ありそうですので、展示写真のお話も聞きながら、ゆっくりその作品群をご覧ください。

8/1まで/9:00~17:00 (会期中無休)


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