季語とは、俳句などにおいて春夏秋冬それぞれの季節感を表すために、句の中に読み込む言葉。
季のことば、とも言われますよね。
今回は、私がこれまでに撮り溜めた園内写真の中から「冬の季語」を連想させる景色を選び、遊んでみたいと思います。
(以下に紹介する各季語の【解説】文は、「きごさい歳時記 https://kigosai.sub.jp/001/」から引用させていただきました。)
◉冬木立
【解説】
『冬の樹木「冬木」が群立しているさまをいう。落葉樹も常緑樹も冬木ではあるが、葉を落とした冬枯れの裸木の木立は、鬱蒼と茂る夏木立と対照的にものさびしいものである。』
木立の中を歩くことはどの季節でも楽しいものですが、見通しのよい山道をシャリシャリと落葉を踏みながら歩くと気分も頭もスッキリ!
「芽ぶきの森」は、ものさびしさというよりも、冬でも人の気配を感じることが出来る《 賑やかな 》森といえるかも…。
◉冬の虹
【解説】
冬に出る虹のこと。虹は、夕立のあとに出ることの多い夏の季語であるが、冬の虹は時雨の空に出たり、荒波の暗い海から立ち上がったりする。夏の虹にくらべて蕭条とした趣がある。
別の季語「山茶花(さざんか)」の向こうに望む冬の虹。こちらも、冬特有のものさびしさよりも、寒さを伴うひんやりとした爽やかさを感じた記憶があります。
◉山眠る
【解説】
冬山を擬人化したもの。中国の山水画伯、郭煕の画論の次の言葉「冬山惨淡として眠るがごとく」が、この季語の原点。春は「山笑ふ」夏「山滴る」秋「山粧ふ」、季節に応じて使い分けのできる重宝な季語。
冬の山の静まり返った様子を例えた「眠る」の表現。一人歩けば、別の季語「鴨・水鳥」の声が遠くに聞こえます。
◉木守(柿)
【解説】
収穫のあとに、一つだけ木に残しておく柿の実や柚子の実、かぼ すの実などをいう。来年もよく実がつくようにという祈りとも、 あるいは小鳥のために残しておくともいわれる。
公園では、風景を演出するために柿の実をそのままにしているので、鳥たちにとっては食べ放題。やがて最後の数個になると、見立てとしての「木守柿」に…。
◉冬紅葉
【解説】
周辺が枯れを深めるなかの紅葉であり、また、冬になってから色が際立ってくる庭園や寺社などの紅葉でもある。
暖冬のせいか、今年はモミジが長く持ちました。
そんな冬紅葉は、別の季語「紅葉散る」と《 揃い 》の景色といえるでしょう。
【解説】
美しく紅葉した葉も、冬の訪れとともに色褪せ、やがて冬の風に散っていく。水分が飛んで軽くなった葉は、北風に軽々と飛ばされる。散り敷いた紅葉に霜が降り、静かに冬は深まっていく。
◉大根干す
【解説】
大根を沢庵漬などにするため、しんなりするまで干すこと。振り分けにして竿に吊るしたり、縄で結って簾状にしたりして干す。
別の季語「冬田」の演出風景としての大根干し。畑には冬の野菜「蕪」や「葱」も植わっています。
◉敷松葉
【解説】
庭などに松の枯葉を敷くこと。それによって苔などを霜の害から守る。茶席の庭などは枯の風情を楽しむために敷松葉を施したりする。
多くのアカマツを擁する水景園において、その松葉の恩恵を、庭園の「しつらえ」として存分に活かしています。
同時期には、別の季語「霜除」を見ることもできます。
【解説】
庭木や草花を霜の害から防ぐためのもの。藁や筵などで草木を覆 うのが一般的。蘇鉄などの亜熱帯植物を菰で包んだり、松などで も樹皮を守るために覆いをする。藁などをいぶしたりして防ぐ方 法もある。牡丹や、芍薬のような背の低い草木には藁で作った覆 いが被せられる。
◉冬三日月
【解説】
冬の三日月のこと。寒空に細くかかる三日月には刃物のような鋭い印象がある。
ぎりぎり三日月でしょうか…。それでも鋭くみえるのは、空気が澄んでいることがポイントなのでしょう。
別の季語である「冬の夜」には「冬の星」が冴え渡ります。
【解説】
冬に見る星は、空気が澄んでいるので冴え冴えとしている。北斗七星やオリオン座など、星座の形をくっきりと見ることができる。
◉さいごに
今回紹介した「冬の季語」は如何でしたか?
対象(モノ)そのものというよりも、それを見たり感じたりする私たち一人ひとりの感受性によって、如何ようにも捉えることが出来る点が面白いですよね。
例年の気候であれば、雪や氷に因んだ季語も織り交ぜたかったのですが今年は暖冬。あまりそんな気分にもなれず…。季語のうえでは「冬暖(ふゆあたたか)」といった冬のさなかの暖かい日、冬の恵まれた一日、という嬉しい言葉もあるのですが。
冬らしい、この季節ならではの寒さを求めてしまう今日この頃。こうした季語を頼りに、日々の暮らしを彩ってくれる「本来の季節感」を忘れないようにしたいものです。