まだまだ暑い日が続きますが、朝夕の暑さが和らぎ、少し過ごしやすくなってきたこの頃。
公園では、秋の七草が咲きはじめました。
新春の1月7日に食べることで無病息災を祈念する「春の七草」に対して、「秋の七草」は愛でることで季節を感じる花々を指します。
古くは万葉集にも詠まれており、山上憶良(やまのうえのおくら)による次の2首が元となり、広まったものと考えられています。
「秋の野に 先たる花を 指を折り かき数ふれば 七種の花」
「萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝顔の花」
ひとつめの歌は「秋の野に咲いている花を指折り数えると7種ある」という意味で、
ふたつめの歌で「それはハギ、ススキ、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、キキョウである」と解説しています。
※「朝顔」とされる花は、諸説ありますが現在ではキキョウとされています
現代では山上憶良の詠んだ歌とは別にいくつかの覚え方がありますが、個人的には「おすきなふくは」と覚えるのが覚えやすいと感じています。公園ではすべての花を見ることができるので、それぞれの花について、みられる場所と一緒に紹介します。
お:オミナエシ(作業庭)
す:ススキ(果樹園)
き:キキョウ(芽ぶきの森)
な:ナデシコ(作業庭)
ふ:フジバカマ
く:クズ
は:ハギ
これらの七草は共通して、日当たりの良い草地や野山にみられる植物です。
明るい草地は人が手を入れることで維持される自然のひとつで、どこにでもある身近な植物だったからこそ
山上憶良も親しみをこめて万葉集に詠んだのでしょう。
しかし、現在では秋の七草の多くは身近な植物ではなくなってきています。
人が手を入れなくなった草地は藪になり、やがては森へと移り変わってしまいます。
そうなってしまうと、明るい草地にくらす植物はみられなくなってしまうのです。
例えば、キキョウやフジバカマは京都府では絶滅寸前。
オミナエシもずいぶんと数を減らし、河原にたくさん生えていたナデシコも少なくなっています。
昔から親しまれてきた植物や文化を守るため、公園では芽ぶきの森の一角にかつての草地に生えていた植物を
守るための場所を設けたり、開発などで失われてしまう植物を近隣から引っ越してきて残す取り組みにも挑戦しています。
秋の気配を感じながら、ぜひ、公園で秋の七草を探してみてください。