水が関係する気象現象には身近なものだけでも結構あります。
温度により姿を変える水の特性上、冬になると水に関わる現象がとても多彩で面白くなります。
夏は雨がほとんどですが、気温・水温に幅が出る冬になると「水の三態」と言われる、気体=水蒸気・液体=水・固体=氷だけでなく、もっといろんな表情を楽しめるようになります。気象現象としては30を超える種類に分けて観測されているそうです。たとえば、雨、霧、露、雹(ひょう)、霜、霙(みぞれ)、霞、雪、吹雪、樹氷、霜柱・・・など。これらはすべて雨の仲間で、水に関わる現象です。
地球は「水の惑星」としばしば表現されますが、たくさんの水があるように見えてもほとんどが海水です。
淡水は2.5%のみで、そのうちの70%ほどが氷や氷河、残りの30%も掘削できない地中深くにあるなどで、いわゆる生活用水や目に見える、手に取れる水として河川や地中の浅いところにあるのは僅か0.01%程度なんだそうです。この貴重な水が気象変化で地表に下りたり上空に戻ったりしながら私たちの周りで様々に変化しています。
そう考えるとなかなか貴重なものを見ているのかもしれません。
今回は、これからの季節に楽しめる水の変化・気象現象を少しご紹介します。
秋から冬に比較的よく出会うのは「霧」です。霧は地上付近に細かい水の粒が漂っているもので、状態としては「雲」と同じとされています。
視界が1km未満の場合は「霧」といい、1km以上見通せるときは「靄(もや)」と呼ばれて名称が変わります。つい先日の京都奈良エリアに発生したのは
「霧」は秋の季語で、春の霧を「霞」、春の夜霧を「朧(おぼろ)」と使い分けているところは、日本ならではの風情です。
よく似た現象で、「露」は空気中の水蒸気が地表にある草木やベンチ、車など屋外のものの表面で凝結した(気体が液体になった)水滴のことを言います。
この露が氷ると「霜」です。水蒸気が一気に氷になって地上のものにとどまる現象です。良く晴れて放射冷却により地面や地上の表面温度が 0℃以下にまで下がると現れる現象です。
そして霜と似て非なるもの、霜柱。
霜柱は完全に氷です。土から氷が生えてくるように見えますが、よく観察すると細い氷の柱が土の粒や苔などを頂上に、密集して伸びあがっています。これはよくよく考えると不思議な現象です。地表の温度が0℃以下でも、地中の温度が0℃以上なら土の中の水は凍らないはずなのに、地中の水分が氷る?そして伸びあがる?というところです。
地表近くの土がほどよく小さな粒であれば、水分は毛細管現象で地表まで吸い上げられていくそうで、吸い上げられた水が冷えた地表でだけ次々と凍り、体積が増 えて細い氷の柱に成長するのだそうです。だから地中ではなく地上で柱上に伸びるんですね。ということは、寒すぎて地中の水分が土と一緒に氷ってしまっては霜柱になりません。絶妙な水分と、地中の温度、地表面の氷点下という条件が揃わないといけないようです。
そして雪。
雪は上空で既に結晶化した水分が地上に落ちてくる状態です。
霜に似ているようにも思えますが、雪は水蒸気が上空の微細な塵などの粒子とくっついて、そのまま固体になったもので、霜は空気中の水蒸気だけでそのまま結晶化してどこかに付着したものです。雪のように気体が液体になることなく、固体になる現象を「昇華」というと習いましたが、雪との違いは大気中でこの昇華が起こることでもあります。
雪が降るのは年に数回あるかないか、そして積もるのはもっと稀です。上空で「雪」となり、落ちてくる途中に周りの水分も凝結しながら、地表まで溶けないで落ちてくる。これもまた希少な条件下ということでしょうか。
寒くなるにしたがって、早く目的地に、早く家に、となりがちですが防寒対策を整えて冬ならではの自然現象、気象現象を楽しむのもいいものです。
これからの季節だからこその景色に、ぜひ出会っていただければと思います。