春がやってくると、里山はさみしげな朽葉色から一斉に色鮮やかな景色へと移り変わります。
春を感じさせる生き物としてはギフチョウやカタクリ、セツブンソウなどが有名で、これらは早春の一時だけ巡り合える「春の妖精」や「スプリング・エフェメラル」とも呼ばれます。
スプリング・エフェメラル(spring ephemeral)とは主に春の短い期間にだけ花を咲かせる植物を指し、花が終わると葉だけを残して急いで光合成を行います。この短期間に一年分の栄養を稼ぐと夏には地上部を枯らして翌年の春まで球根や根の状態で翌春までじっと地中で過ごすのです。植物以外では、早春の一時だけみられる昆虫も同じように扱われます。
このように、春にほんの少しの期間しか姿を現さないことがspring(春)ehemeral(儚い、つかの間の)と呼ばれる所以です。
けいはんな記念公園にはギフチョウやカタクリ、セツブンソウはみられませんが、いくつかのスプリング・エフェメラルを観察することができます。
ショウジョウバカマやムラサキケマンは、山棚田周辺にみられます。
ショウジョウバカマは夏以降も地上に葉を残すので厳密にはスプリング・エフェメラルではないのですが、葉の先をよく観察すると葉先に小さな株がついていることがあります。種で増えるほかに、自分の分身を葉先に作って増えることができる面白い植物です。
芽吹きの森に足を踏み入れると、日だまりに縄張りを張ろうと活発に飛び回るコツバメの姿が見られます。
一見すると地味なチョウですが、翅を閉じている表面にはラメを散らしたような輝きがあり、控えめな美しさをもっています。
一方、翅を開くと地味な裏面からは想像できない鮮やかな金属光沢のある空色があらわになります。
日光浴をしている時などは翅を開いて止まることが多いので、ぜひ観察してみてください。
また、スミレの仲間やコバノミツバツツジを観察しているとブンブンと飛ぶ小さなアブがやってくることが分かります。
これはビロードツリアブというアブの仲間で、長い口で花の蜜を吸うため人に危害を及ぼさない種類です。
ふわふわした体で懸命にホバリングする姿はなかなか可愛らしく、人の血を吸うアブのイメージとはかけ離れたものかもしれません。
ここで紹介したもの以外にも、春のほんのひと時にだけ出会える生き物は様々な種類が知られています。
ぜひ、けいはんな記念公園で期間限定の生き物たちを探してみて下さい。