もうすぐ桃の節句、ひな祭りですね。
公園ではひなあられのふるまいと折り紙遊びのイベントを予定しています。
今日は桃の節句のしつらえの主役、雛人形にまつわる昔話をご紹介します。
その前に、雛人形はいつ出していつ片付けるかといったことを気にされたことはあるでしょうか。当公園では節分のイベントが終わったらほどなく設置し、3月3日まで展示して撤去します。4日には片づけなくてはいけないと思っていたのですが、少し調べると、4日以降のお天気や縁起のいい日に片づければよいということのようです。いずれにしても早めに片づけるべきということには変わりないようですが。
小さい頃は小道具が面白かったものの、人形のリアルさが怖かったものです。大人になるとその芸の細かさや表情の違いなど楽しむところが変わってきました。
雛段の出し入れにはそれなりに時間がかかります。楽しかったり面倒だったりは人それぞれでしょうが、雛人形にとっては外に出られる限られた時期です。そんなお話。
※記憶に頼った記述ですので、不確かな内容ですがご容赦ください。
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昔々ある山里に屋敷があり、おばあさんが作男(農耕のための雇われ人)と共に棲んでいました。
静かな山里の屋敷前(イメージ)
屋敷の庭先をイメージしましたが、伝わるでしょうか。
ある日、深い傷を負った老人が家の前で倒れていました。
近くで戦があったと聞いていたおばあさんは、あまり人に知られないようにと、医者にも見せずに屋敷で介抱してあげることにしました。
介抱の甲斐あって、老人はだんだんと元気を取り戻してきました。おばあさんはどこから来たのかを聞きましたが、老人は口をつぐんで何も答えません。おばあさんはそれ以上聞くことはしませんでした。
元気を取り戻した老人は、何もお礼できるものがないがせめてもの印にと、一対の雛人形を彫りました。そして、「この男雛は私が仕えた方によく似ており、女雛は縁のある娘に似ている。どうか大切にしてやってください。」と伝え、どこへともなく去っていってしまいました。
おばあさんはその雛人形を大切にし、毎年桃の節句に飾っていました。
何年か経ったある年のこと、おばあさんは風邪で寝込んでしまい、雛人形を出すことができませんでした。
桃の節句の晩、おばあさんが眠っているとどこかから声がします。
「今日は桃の節句だというのに、おばあさんはどうしたのか。もしや忘れておられるのか。」
箱の中の五人囃子の一人
雑談しそうな顔の人形を選びました。
「よくよく閉じ込められる身の上よ」
男雛
何かを思い出しているのでしょうか。
「そんな悲しいことをおっしゃいますな」
悲しむ女雛
男雛の言葉に女雛が悲しみに耐えかねます。
「若君が悲しんでおられる。姫の泣き声も聞こえる。箱の中は窮屈だがお囃子でお慰めしよう」
そんな話声がしたと思ったらにぎやかなお囃子が聞こえてきました。
箱の中のお囃子
にしては少し広いですが。
おばあさんはしばらくその音に耳を傾けていましたが、箏(こと)の音がないことに気づきました。おばあさんは箏を弾くのが得意だったので、お囃子にあわせて弾き始めました。
「箏の音とはありがたい。しかし窮屈な箱だ。いっそ出てしまえ!」
出てしまえ!
思い切りのよい人です。
一層にぎやかな音が奏でられ、おばあさんも楽しく箏を奏でました。
五人囃子
写真奥に一人楽器を持っていない人がいますが、ちゃんと謡うそうです。
翌朝、おばあさんが目覚めると雛の箱がめちゃくちゃになっていました。作男はねずみが暴れたようだと言っています。
おばあさんは箏の前で寝ていました。そしてだんだんと昨夜の夢か現かわからない出来事を思い出してきました。
ではあの雛たちは・・・。
おばあさんは、老人が丹精込めて作った雛人形に魂が宿ったのだと思いました。
おばあさんは雛人形を飾ることにしました。
作男は戸惑って「桃の節句は過ぎましたが…」と言いましたが、おばあさんは「年に一度くらいだしてやらないと雛が悲しみます」と言いました。
それ以来、この地域ではひな人形を年に一度は飾ってやらないと良く無いことが起こると言い伝えられるようになりました。
この男雛は源頼家公に、女雛はその乳母の娘によく似ていたと言います。
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物に魂が宿るというお話は恐怖を感じるものが多いのですが、このお話は不思議さと人の様々な想いが感じられるお話でした。
それと同時に、ちゃんと出してあげないと・・・と身につまされるものがあります。
公園の雛人形は私とは違ってこまめなスタッフが丁寧に出し入れしてくれています。今年も多くの人の目に触れ喜んでいるでしょうか。
公園の七段飾り
今回のご出演はお内裏様とお雛様、五人囃子の皆様でした。