けいはんな記念公園、そして水景園は南山城地域の風景を取り込んだ景色づくりをしています。例えば、里棚田のエリアには田や畑が広がり、山棚田のエリアではかつての薪炭林を理想とした管理をしています。
※里山の景色の作り方についてはこちらの記事をご覧ください。紅萌ゆる風景の作り方
里と山を繋ぐ辺りにはアンズ、スモモ、モモなどバラ科の花木を中心に、果樹が複数植わる「果樹園」のエリアがあります。5~6月はこれらの植物が実を付ける実りの季節。人と密接な関わりのあるこれら植物の「実りの風景」をご紹介します。

●ウメ
上述の果樹園には少ないのですが、梅林や水景園入口に複数植わっており、早春の見どころのひとつとなっています。観賞用品種を「花ウメ」、果樹用品種を「実ウメ」と区別しますが、いずれの種類にも果実がつきます。
ウメは「短果枝」という10~15cmの短い枝に花を咲かせやすい性質があり、通常は花後に剪定します。公園でもその時期に合わせて果実を収穫し、販売することがあります。「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」ということわざはこの性質が由来ですが、植物も人も、相手(対象)の性格や個性に合わせた対応が大切ということですね。


●スモモ
ウメのあと、3月下旬頃から果樹園で白い花を咲かせます。実が熟すのは初夏で、公園では7月前後に色付いてきます。たっぷりの果汁を含んだ甘酸っぱい果実は多くの人に好まれ、特に中国では「五果(ごか)」と呼ばれる重要な果実の一つとされています。こちらも熟したら販売に回しています。
中国の故事「李下に冠を正さず」の「李」はスモモであり、『スモモの木の下で冠を直そうと手を上げると、実を盗むと疑われるから上げてはならない』…つまり、人から疑いをかけられる行いは避けるべきである、というたとえです。古来より、美味しく魅力的な果実だったのですね。


●アンズ
スモモと同時期に淡いピンク色の花を咲かせます。特に蕾の時期は色が濃く、区別をつけやすいと思います。実は6月頃熟し、生食も出来ますが、完熟しないと酸味が強く出ます。オレンジ色に熟した実はいかにも美味しそうですが、皮が傷みやすいため、青果としての流通は少なめです。ジャムやシロップ、ドライフルーツなどの加工品の方がおなじみかもしれません。
アンズの種を割った中にある「核(仁)」の部分は「杏仁(あんにん)」といわれ、咳止めなどの生薬や、すり潰して牛乳や砂糖と合わせたスイーツ「杏仁豆腐」の香り付けとしても使われる、用途の広い植物です。


●モモ
果物としておなじみのモモ。本数は多くありませんが、こちらも果樹園にあります。花色は濃いピンクで、淡い色の他の花木に比べよく目立ちます。病害虫が付きやすく、また実にも袋掛けなどの手入れが不可欠で、こまめな管理が必要な種類です。
桃の木は古くから「仙木(せんぼく)」とも呼ばれ、種や枝、花にも悪いものを流す力があるとされてきました。ひな祭り(桃の節句)で花を飾り無病息災を祈るのも、鬼退治する「桃太郎」が桃から生まれるのにも、訳があるのですね。


●カラミザクラ
果樹園の中で一番先に花を咲かせるバラ科の花木。3月、この花の開花を皮切りに、果樹園では次々に花が咲いていきます。サクランボ(西洋実桜)の仲間で、実は5月末~6月頭頃熟し、生食できます。小ぶりで酸味も強く流通・販売される事は少ないですが、鳥は好んでついばんでいます。
中国原産でシナミザクラの別名も持ち、明治初年に渡来したと言われています。果樹としての価値と、早咲きの観賞価値、両面のある花木です。


●クビアカツヤカミキリのこと
近年、これらバラ科の花木でクビアカツヤカミキリの被害が問題となっています。
幼虫がサクラ、モモ、ウメなどの木を食い荒らし枯らしてしまう外来生物で、繁殖力が非常に強く、近畿地方では全ての府県で被害が確認されています。京都府では令和6年7月に被害を初確認した後、南山城地域でも(京田辺市、木津川市、精華町)令和7年に被害木が確認されました。
公園にもサクラを含め400本近いバラ科花木があり、職員は定期的に「フラス(木くずと幼虫のフンが混ざったもの)」がないか巡視しています。早期発見が肝要ですので、もしも公園のサクラやウメの樹木の下で「うどん状のフラス」を発見したら、ご一報いただければ幸いです。
環境省のクビアカツヤカミキリについてのサイトhttps://www.env.go.jp/nature/intro/4document/files/g_kubiakatsuyakamikiri_kaitei.pdf
初夏に旬を迎える「バラ科」の果実。美しく、美味しいこれらの花木は私たちの暮らしの身近にありながら、今、新たな脅威にもさらされています。実りの風景を楽しみつつ、豊かな環境を未来へ繋ぐ大切さに、少し思いを寄せてみていただければ幸いです。