けいはんな記念公園は「日本の里の景色」をテーマにしており、里にくらす生き物たちも景色を構成する重要な要素のひとつです。しかし、かつて里にみられた様々な生き物たちは、近年になって急速にその姿を消しおり、各地でそれらを守るための活動が行われています。
また、永谷池や芽ぶきの森が公園内に残された経緯には、かつてオオタカがそこに巣を作っていたことが関係しています。残念ながら当時くらしていたオオタカは、開発に伴って別な場所へ移ってしまいましたが、オオタカのくらせるような環境を守るという目標をかかげ、里山管理に取り組んでいます。

一言で「守る」といっても、自然保護や環境保全のようにさまざまな用語や考え方があります。ここでは混同しやすい「保護」と「保全」について、ひとまず整理しておきましょう。
保護(Preservation)とは、原則的に人の手をかけずに、そのままの状態を維持することを意味します。具体的には法律によって開発や採掘・伐採などの制限される自然保護区や、オオサンショウウオのように無許可での飼育や販売などが禁止される天然記念物のようなケースです。

一方で保全(Conservation)は、人が手を加えながら、より良い状態に管理することを意味します。また、保全の中には自然を賢く活用するような取り組みも含まれます。人が手を加えることで守られる里山や草原などの自然を守るようなケースが相当します。

けいはんな記念公園での自然を守る取り組みは、ほとんどの場合が「保全」を行うことになります。
けいはんな記念公園の自然についての概要はけいはんな記念公園の自然で、下草刈りや間伐など、人の手による里山管理は紅萠ゆる里山のつくりかたなどで詳しく紹介していますので、今回は割愛します。
ここでは、もう一歩踏み込んで、里の生き物を守るための取り組みをいくつか紹介したいと思います。
【すみかを増やす】
里山の管理を行うとたくさんの枝や材が出ます。
その一部を積み置いておくと、さまざまな生き物がやってきます。
初夏には幼虫が材を食べるカミキリムシやタマムシの仲間が集まり、冬になると薪の隙間や樹皮の下に多様な昆虫が集まって冬越しをする場所にもなります。
そこで、このようなすみかを作ることで、どれだけの種類の昆虫がやってくるのかを2023年に大阪市立自然史博物館と共同調査を行ったところ、まだ名前のついていない未記載種を含む700種以上の昆虫が記録されました。

また、最近では放っておくと大きく育って薮になってしまうタケやササを使って、ハチなどのすみか作りにも取り組んでいます。このようなすみかは「インセクトホテル」や「ビーハウス」と呼ばれ、ヨーロッパを中心に生き物を増やす取り組みとして普及していますが、日本での知名度はあまり高くありません。
全国的に花にやってくるハチは減少傾向にあるため、今後このような取り組みは、より一層大切になってくるかもしれません。

【管理を工夫する】
梅雨を迎えると下草が旺盛に生育し、草刈りに追われる日々を送ることになります。草刈りは大変な作業のひとつですが、ここでひと手間かけるかどうかが生き物のすみやすさを左右します。ナイロンコードを使った草刈りはチップソーに比べてケガのリスクが低く、後片付けも楽ですが、何年か地面すれすれで草刈りを続けると多くの植物が痛められ、種類が大幅に少なくなってしまいます。
チップソーを使って、地面から数センチ離して刈ると植物へのダメージを軽減することができ、高く刈り残されたススキなどは夏の暑さや冬の寒さをしのぐ隠れ場所としても役立ちます。
さらに草刈りを複数回に分けて半分ずつ刈るなどの配慮を加えると、そこにくらす生き物にとってより優しい管理を行うことができます。

また、近年絶滅のおそれの高い草原にくらす夏から秋に花を咲かせる植物は、冬から春にかけて草刈りをすることで実の数が増えることが調べられており、公園でもそれにならった管理を導入しています。

【育てて守る】
里の景色をつくるうえで、「もともとそこにいた生き物が普通にいる」という点は非常に重要な要素になります。そんな中で2021年に近隣の農地が開発されることが分かり、どんな植物がいるかを専門家と一緒に通年調査し、その一部を公園に引っ越して守り育てる取り組みをはじめました。
このように本来のすみか以外の場所で守ることを専門的に「域外保全」と言います。
域外保全には、生き物のくらしぶりや遺伝子の交雑など専門的な知識を必要とする場面が多く、大阪市立自然史博物館や大阪公立大学、きょうと生物多様性センターの専門家に助言や指導を受けています。


【研究などに利用する】
調査で得られた標本は博物館に収蔵され、私たちの共有の財産として保存されています。公園の取り組みに関わる標本も展示や研究に活用され、自然や生き物を守るための大切な資料となっています。


【公園を楽しむことは公園の自然を守ること】
ここまで記事を読んでいただいた方の中には「難しいことをやってるな」と感じる方もおられるかもしれません。
しかし、実は公園で楽しい時間を過ごしてもらうことも、公園の自然や生き物を守ることにつながっています。
イベントやしつらえを通して自然や文化について知ったり体験が、自然を守りたいという動機になることがあるかもしれません。
また、入園料やイベントの参加費などは里山の管理や生き物を守る取り組みにも役立てており、たくさんの人に来園してもらうことは公園の価値を高め、末永く残していこうという評価にもつながります。
ぜひ、公園で楽しい時間を過ごし、そこに息づく自然や生き物にも思いを馳せていただけると嬉しいです。