白や薄紫、桃色の花が夏を彩るムクゲ。
公園内では、水景園入口や屋上棚田の生け垣などに植えられています。一重咲きのほか八重咲きもあり、薄く繊細な花弁が暑さを忘れさせてくれるようです。今回はそんなムクゲについてのお話しです。
ムクゲはアオイ科フヨウ属の植物で、この花に似ているハイビスカスも同じ分類に属します。ハイビスカスはハワイ諸島などが原産で、熱帯性の常緑樹。ムクゲは中国やインドなどが原産の落葉樹です。そして花弁を比較すると、雄しべと雌しべの付き方に違いがあります。ハイビスカスの場合は雌しべ先端が五つに分かれ、その付近のみに雄しべが付きます。一方でムクゲは、長く伸びた雌しべに雄しべが連なって付く特徴があります。また、ハイビスカスは近年の園芸種の生産によってグレーのような花色や二色咲き(複色)のもの、雌しべ先端に花弁が付く八重咲きの品種まで生みだされています。
このように鮮やかでバリエーションも多く、南国の風を感じるハイビスカスに対し、同科同属のムクゲは、楚々とした風情があります。そのため、夏から秋にかけての茶事に茶花として用いられることも多く、籠や無釉焼締めの花入に生けられた姿は「侘び寂び」を体現し、利休の孫の千宗旦や小堀遠州といった著名な茶人にも親しまれたと伝わります。
さて少し視点を変え、京都の社寺に目をむけると、それらのなかにもムクゲにまつわる信仰や社伝がありました。
まずは夏の京都を代表する祭礼・祇園祭。ここにもムクゲと深い関わりがあります。祇園祭を氏子区域と共に執り行う八坂神社では、神前に御饌花としてムクゲを供える習わしがあり、祭礼期間中には欠かせない植物となっています。その他、京都市上京区上御霊前通付近にある西林寺には「木槿地蔵尊」と称される本尊があります。社伝によると、開創の慶俊僧都が悟りを開いた時、ムクゲの咲くなかから地蔵尊が姿を現し、それを石に刻み付けて本尊としたという謂れです。
これからの残暑のなか、水景園内のムクゲの花はまだまだお楽しみいただけます。見頃は9月中頃まで☺