まだまだ暑い日が続きますが、立秋に入り暦の上では秋の季節となりました。青々とした葉を茂らせた稲は、しばらくすると穂を出して目立たない花を咲かせます。穂が出る前までに除草を済ませ、「穂肥」と呼ばれる肥料を与えることで、花をたくさん咲かせるための栄養を補います。稲の花は天気の良い日の午前中に咲き、風で花粉が運ばれ受粉が済むと速やかに花を閉じてしまいます。期間も時期も限定の稲の花を、ぜひ公園で観察してみてください。
ヒガンバナの花が田んぼの土手を彩る9月になると、稲穂が実りはじめ、10月には稲刈りの季節を迎えます。稲穂が実り、お米ができはじめるとスズメなどの鳥や獣がお米を食べにやってきます。田んぼに設置している鳴子や案山子(かかし)は鳥や獣から田畑を守る先人の知恵の一つです。案山子は元来、焼き焦がした獣の肉を串刺しし、その匂いで鳥や獣を追い払う「嗅がし」として使用されていました。その後、「嗅がし」が転化し現在の人型をした「かかし」になったとされています。鳴子は音で鳥を追い払うための装置で、ひもを引くとカラカラと気持ちの良い音が鳴ります。どちらも公園では昔の里の景色を演出するためのしつらえとなっています。
このように手間暇かけて育てるお米をして、「米という字は八十八という字でできている」とするのは地域の農家さんの言葉です。お米ができるまでに88の作業が必要だという意味だそうで、それぞれの作業にあわせて田んぼの景色も移り変わります。これから秋に向かうにつれ、日々移り行く里の景色をお楽しみください。