けいはんな記念公園

餅花のある風景

ウメの開花の知らせを耳にする季節がやってきました。立春も過ぎ、気持ちもそろそろ春について思う頃…という季節でしょう。さて、今回のスタッフブログでは、「餅花」のある2月の風景に関してです。「餅(そして、餅のようなもの)で出来た花」には、どのような意味があるのか、どんな歴史があるのか、けいはんな記念公園周辺の事例も合わせて、紹介したいと思います。

【けいはんな記念公園の餅花】

けいはんな記念公園では、毎年12月中頃になるとお正月の準備を始めます。しめ縄飾り、門松、鏡餅と同様に餅花もです。餅花は、水景園の里棚田で実ったもち米を搗き、ひとつひとつ手作業で枝につけていきます。そのなかで大切にしているのは、枝々に餅をつけるときは等間隔にかつ、小さく丸く整えることです。餅本来の色を活かした餅花は、上品かつ繊細な印象ですが、当園では薄紅色の餅花も作り、華やかに仕立てます。そして、根気よく指先で捏ねながら丸くすることで、飾り付けた後、間近で見ても美しいのです。

上記の写真は、2025年のお正月のしつらえです。鏡餅の横でひっそりと。

続いて下記は2026年のお正月。京都・大阪・奈良でよくみられる形の注連縄の上部に設置してみました。センター分けの髪型にみえるような餅花の隙間からは、景観演出部によって制作された藁細工の馬も。干支の動物を飾り付けるのもカッコよくていいですね。

そのほか、ビジターセンター内にも餅花をしつらえました。こちらは枝によって紅色、白色と分けています。見上げるほどの枝にしつらえた餅花も大きくて見ごたえがあります。

餅花は毎年恒例のしつらえです。公園スタッフが代々受け継ぎ、来園のみなさまをお迎えするためのおもてなし。年ごとに趣向を凝らし、来る新年が良き一年になるように思いを込めて製作しています。

【餅花の歴史】

餅花は現在、お正月~3月頃までの冬から春にかけて、街中などでみかける装飾品になっているようです。それらの多くは、枝垂れるようになっており、風や人の往来で揺れること、紅白やカラフルな色の球体の飾りがついている場合が多いです。さて、この「餅花」。古式の事例が残るのが、江戸時代後期に発行された『江戸自慢三十六興 目黒不動餅花』や『北越雪譜/ほくえつせっぷ』です。

『江戸自慢三十六興』の餅花は、目黒不動に参拝する人々のために縁日で売られている縁起物のひとつであることが見受けられます。手前二人の背景には、参詣者でにぎわう冬の目黒不動の様子や当時の人々の暮らしの一端が見えてきます。滝のように落水する部分を拡大してみると、神仏に祈願する水垢離の人物も。

目黒不動餅花(歌川豊国・歌川広重画「江戸自慢三十六興」 国立国会図書館蔵)部分

以下は、『北越雪譜』の引用です。

  “江戸などの餅花は、十二月餅搗の時もちばなを作り歳徳の神棚へさゝぐるよし、俳諧の季は冬とす。我国の餅花は春なり。正月十四日までを大正月といひ、十五日より廿日までを小正月といふ、是我が里俗の習せなり。さて正月十三日十四日のうちに門松しめかざりを取り払ひ、餅花を作り、大神宮歳徳の神夷おのおの餅花一枝づゝ神棚へさゝぐ。その作りやうはみづ木といふ木、あるひは川楊の枝をとり、これに餅を三角又は梅桜の花形に切りたるをかの枝にさし、あるいは団子をもまじふ、これを蚕玉といふ。”

というように、江戸時代後期には、東京や北陸地方での餅花に関する事例があったのです。そしてその造形は、現在と同じように柳などの木々に餅を付けていたのです。場合によっては、三角や花形にカットするような事例もあったようで、見ること(鑑賞)に重きを置くようなこともありました。行事のなかの飾り物が、素材を変えながらもその姿が変化しないというのは、日本の行事の特徴的なひとつです。例えば鏡餅。いまはプラスチック式の餅型に個包装の小餅が入った商品があったり、餅花もプラスチック製品のものがあったりと、軽量化や長期保存を狙ったものがあります。このように、時代は変化しても、新しい年を迎える準備に向かう心(精神)には変化はないのです。

【けいはんな記念公園周辺の餅花事例】

さて、当園のある学研都市周辺には、神社の神事として餅花を奉納する事例があります。それが、木津川市の相楽(さがなか)神社です。ひとつひとつの餅花のサイズは10㎝程度と大きく、拝殿には瓢箪型の藁包みに差し込まれた餅花が用意されました。この瓢箪型の藁包みは、「ションマラ」と表現されるようで、その数は20基ほど。餅花それぞれには宮座の人々の氏名が記されており、秋の五穀豊穣や予祝の願いが込められています。午前中には、巫女さんによる神楽舞の奉納も行われました。また、奉納された餅花の傍らには、粥占いの結果もあり、早生の竹筒に最も多い飯粒が確認されました。

みなさんもぜひ、来年のお正月には「餅花」を見つけに散策されてはいかがでしょうか。