けいはんな記念公園

松ぼっくり

日本庭園といえばマツ、と誰もが思い浮かべるくらい、縁起がよくお庭の雰囲気を創る「役木」としても知られた「松」。自然界では北半球を中心に広く自生しており、過酷な環境にも適応する強い生命力を持つ植物とされていて、日常にも馴染みのある樹木です。

日本の風景の中に当たり前のように溶け込んでいるマツですが、かなり特殊な進化と特性をもった不思議な植物のようです。敢えてやせて乾燥した他の植物が好まない環境でも生息し、極限下で生きていけるようにキノコや菌類との共生で養分の少ない土地でも水分と養分を吸収できるしくみを獲得しているのもその例です。マツの仲間はおよそ270万年前に出現したとされていて、裸子植物であるというのは皆様ご存知のところですが、受粉のしくみも含めて原始的なスタイルの植物といえます。言い換えると、それだけの時間をかけて強くたくましく生き抜く術を身に着けたサバイバーな種族です。
その寿命は種類や環境にもよりますが、40年とも100年とも言われ、650年を超える長寿マツも存在するそうです。それもあってか、マツは日本では幽玄なイメージがあり、神の依代として神聖で特別な木とされています。

さて、公園はというと、水景園全体の景観を引き締める日本庭園の要素として存在するマツと、芽ぶきの森のアカマツ山などの自然な植生、無料エリアと公道の区分をやわらかく示す役割といった様々なマツの様相が見られます。特に公道(精華大通り)沿いの松並木は、マツの美しさを存分に楽しめるエリアです。枝の向き、全体のバランス、隣との干渉回避を考慮して剪定されていて、1木ずつの姿が美しく、立ち並ぶ木々が遮らない仕切りの役目をしつつ、公園に一つの景色を作っています。

今回、公園の松ぼっくりをワークショップに使用することをきっかけに、マツや松ぼっくりについて情報収集したので、皆様にも少しご紹介したいと思います。
公園にもアカマツやクロマツなど、マツの木はたくさんあり、松ぼっくりも木によっては高い場所にまだたくさんついていますが、これが思いのほか「へー」と思う点が多数あります。

●松ぼっくりは何者?

通称「松ぼっくり」は植物学上「球果」「松毬(まつかさ)」といいますが、いわゆる果実ではありません。裸子植物なので、種になる胚珠を包む子房がないので果実を作らず、鱗片(りんぺん)の間で種を育て、無事風に飛ぶまで種を守ります。
そして、あまり意識されない「マツの花」ですが、他の植物と同じように春先に花がつきます。大量に花粉を携えた雄花と新芽の先にちょんと付く赤紫の雌花には花弁もガクもなく、目立ちません。虫に花粉を運んでもらわず風に飛んで受粉する「風媒花」のため、必要ないパーツは省エネということです。また雌花が雄花よりかなり上にできるのも、同じ個体の雄花の花粉をもらわず、できるだけ違う個体の遺伝子を受け取れるように、だと言われています。マツの花粉一粒には、風船のような気嚢(きのう)と呼ばれる袋が左右に付いていて、花粉は遠くまで飛ぶことができるんだそうです。また、雌花は鱗状の胞子葉が球状に集まっていますが、お天気が良く花粉が飛ぶ時期だけ少し開き、受粉するとまた閉じるのだとか。

雌花
雄花
雌花:受粉期
雄花:受粉期

こうして受粉しても自然界では、松ぼっくりに成長して種を飛ばせるのは受粉した雌花の20~30%だそうです。そして、乾燥し木質化したいわゆる松ぼっくりになるには2年の歳月がかかります。マツの花が付く頃に花の根元に小さく緑色の松ぼっくりの子どもが付いていたら、それは前年に受粉して、内部で種を育てている最中です。

前年受粉の松ぼっくり、成長中
前々年以前の松ぼっくりも残っている

●松ぼっくりのふしぎ

翌年に大きく充実した球果は赤茶色くなり、充実して開きはじめるのは10~12月頃、樹上で鱗片が開くと種を風に乗せて飛ばします。種はセロハンのような薄い翼の先端についていて、松ぼっくりの鱗片ひとつに種付きの翼が2枚挟まってできます。松ぼっくりは空気の乾燥で笠の外側が縮むようにできていて、種の羽を押し出すように広がり、樹上高いところからより遠くに飛ばされるようにできています。松ぼっくりは外側と内側で湿度による収縮率が違うので、逆に湿度が高くなり雨が降ると傘の外側が湿度で伸びて閉じるようにできていて、種や翼が濡れないよう保護しています。雨などで笠が閉じるのは30分~数時間ですが、一旦濡れて閉じたものは半日~2日(天候による)ほどかけてまた開くそうです。

種を飛ばし終えた松ぼっくりは役目を追えますが、すぐ落ちてくるわけではなく、落果にドングリほど決まった季節はありません。俳句では松ぼっくりは晩秋の季語ですが、秋になったから落ちるというよりは、乾燥して木に留まることができなくなって落ちるので、比較的、一年中出会うとこができます。中には落ちた松ぼっくりに種が残っていることもありますので、見つけたらぜひ種の付き方も観察してみてください。
余談ですが、松ぼっくりが湿度で笠を開いたり閉じたりする機能を活用し、衣服内の湿度に応じて生地の通気孔が開閉するという高機能のアウトドア、スポーツウェアもあるそうですよ。自然はアイデアの宝庫ですね。