四季折々の行事、古くから各地に伝わる習俗は春夏秋冬の暮らしに彩りを与えます。現在ではお祭り、イベントのひとつとして、こども園や学校などの教育施設をはじめ文化施設、支援施設、商業施設…多くの人が集う場所で行われています。

しかし現在ではその伝統の継承が難しくなっている場合もあります。公民館や公会堂、かつては集落や家族単位の小規模の同族集団によって行われていたものも、高齢化や地域開発に伴う都市住宅化、趣向の多様化に伴い、これらの行事を営むことはなかなか難しい世の中となりつつあるようです。けいはんな記念公園では、そんな数十年前まで関西地方や日本各地で見られた文化を大切にし、子どもたちや多くの公園利用者の皆さんにこの素晴らしさを伝えるべく季節ごとの特色ある光景をイベント・サービスとして提供しています。

兵庫県神崎郡福崎町で誕生し、日本民俗学の礎を築いた柳田國男(やなぎた くにお/1875 ~1962)は、次のような言葉を残しています。

「大きな神社の祭日は、近年神職たちの手で改定したものが多いけれども、気をつけて見てゆくと、最初はほとんど皆民間の年中行事の日であった。その日は家々でも祝いまた休み、必ず定まった食物をこしらえることは、これも祭の日が改まって後までも変らない。つまりは祭礼も重要な節供の日ということが出来るのである。(中略)そうしていろいろの変った催し物のない社はたくさんあっても、この日新穀の餅強飯(もちこわめし)を調じて、ささげかついただくのを、祭の楽しみの中心とせぬものは一つだってない。マツリという語のもとの意味が、もし私などの考えているように、マツラウと同じであり、侍坐(じざ)とか勤仕とかいう点にあるとすれば、それはかえって家々の節供、または村々の小さな社の祭において、今も厳粛に守られているのであった」(註1)

今回は民俗学的視点などから、秋に見ごろを迎える植物にまつわる「アレコレ」を紹介したいと思います。

 

菊/重陽の節句

現代では秋の菊の見頃は10月~11月にかけてですが、かつての9月9日(旧暦)は長寿を祈る日として菊花を観賞する「重陽の節句」が行われてきました。

菊を切り花にしたときの独特な香り、長持ちする生命力は、古来の人々にも愛でられてきました。例えば平安時代の宮中祭祀で菊の花びらを浮かべた菊酒をふるまった事例が代表例です。その他、9月8日に菊の花に綿をかぶせておき、翌朝9日に菊の香りを移した綿で身体をぬぐって長寿を祈願する慣例もありました。

皆さんのなかでは、菊=仏様の花という認識をお持ちの場合もあるかもしれません。それは、先述の菊ならではの香りや比較的長持ちする特徴が、美しさを保ち続けることに由来し、神仏の供物としてふさわしい植物という認識が広く共有されてきた証でもあり、ひいては日本文化のなかで育まれた文化の香りを現代に残しているといえるのです。

この重陽の節句と同じ、五節句に数えられるのが1月7日の人日、3月3日の上巳、5月5日の端午、7月7日の七夕です。1月1日がここに無いのは元旦が別格の存在であったためです。

けいはんな記念公園では現在、「ヨメナ」が見頃。薄紫の花は日本の秋によく合います。

 

 

里芋/亥の子祭り

旧暦10月10日稲刈りなどの収穫後に行われて来た収穫祭を、関西地方や中国・四国地方では「亥の子祭り」と呼び、新穀の餅をついて田の神様にお供えします。また、お月見にお供えするものと言えば、お団子やススキを連想する場合が多いかと思います。実りは田畑を生業にしていた時代には喜びの時、大地の恵みに感謝をする季節です。そのため、現在定着した「観月」文化の背景には、穀物や野菜の収穫を祝う「収穫祭」としての側面があるのです。関西地方では、その伝統を大切に継承していることも多く、三方に里芋や大豆などをお供えする事例を見ることが出来るのです。団子を月に供することは、里いもなどの丸っこい形状を模しているのかもしれませんね。

この他、旧暦9月の十三夜には栗や枝豆をお供えする「栗名月」・「豆名月」も存在し、名月を祝っていました。

今年度の「観月の夕べ」。三方にお団子と里芋のお供えを。

紅葉/紅葉狩り、その他

皆さんは「竜田揚げ」はお好きでしょうか。

鶏だけでなく、豚や魚類などに下味をつけて片栗粉をまぶして揚げる料理全般を称します。昨今は様々な味付け、衣を楽しめますね。私はやはり、鶏肉派です(笑)。

さてこの竜田揚げ、実は奈良県生駒市から平群郡、斑鳩町内を流れ、大和側に合流する竜紅葉』に見立てたのです。

関西には紅葉の名所が随所にあるますが、けいはんな記念公園も穴場スポットとして多くの皆さんに秋のひと時を満喫していただいています。これからの季節が水景園の紅葉の見頃です。10月20日現在、やっと色付きはじめといったぐらいです。皆さんのお越しをお待ちしています!

 

 

これら、地域に根ざした行事には、歴史や人々の暮らしの織りなした特色ある文化があります。

みなさんが生まれた地域には、どんな伝統的な行事があるでしょうか。地域が違えば風土や暮らしが異なるように歴史的背景も様々です。気候の良い行楽シーズン、皆さんそれぞれの「秋」を探しに出かけてみてはいかがでしょうか。

註1…柳田國男『年中行事覚書』講談社学術文庫 講談社 2009年3月19日第32刷発行

 


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