端午の節句を控え、公園にこいのぼりが泳ぐ頃、田んぼのレンゲ畑は見頃を迎えます。
お米をつくる田んぼがレンゲ畑になっているのでしょうか?
それは、かつてはレンゲが作物を育てるための肥料として利用されていたためです。
春の里を彩るレンゲについて、今回は掘り下げて紹介してみたいと思います。
昔から日本の景色としてなじみの深いレンゲですが、実は中国原産の外来植物です。
「レンゲ」という呼び名が一般的ですが、「ゲンゲ」が正しい名前ということは、あまり知られていないかもしれません。
ダイズやフジなどと同じ、豆の仲間(マメ科)で、花が輪のように並ぶ様子を「蓮」に見たてて、「蓮華草」と呼んだと言われています。
レンゲの全体を観察すると、さまざまな部分が見えてきます。
紫色の花、いくつも集まった丸い葉、豆のような鞘に、根にはこぶが付いています。
花に注目してみると、一輪に見える花はいくつかの小さな花が集まってできていることが分かります。
さらにひとつの花を分解して詳しく観察してみます。
レンゲを含むマメ科の花は、旗弁、翼弁、舟弁の5つの花びらからなっています。
このような複雑な形をしているのには意味があり、レンゲがこの複雑な花のつくりで花にやってくる虫を選別しているのです。
花にやってくる虫は、蜜をもらう代わりに花粉を運び、植物の受粉を助けます。
ところが虫の中にも花粉をたくさん運んでくれるグループと、そうでないグループが知られています。
中でもハチの仲間は花粉を効率的に運んでくれるため、花にとっては大変良いお客さんと言えます。
一方でハナムグリなどのコウチュウの仲間などは花粉を運ぶ効率があまりよくありません。
ここで、レンゲはハチの仲間が花にやってきた時に脚で踏ん張り舟弁を押し下げることで花をこじ開け、
効率良く花粉を運んでもらえるような花の形に進化したと考えられています。
次に葉を観察してみましょう。
「レンゲの葉を一枚採ってください」と言うと、多くの方が丸い葉を一枚渡してくれます。
実は、これは一枚の葉ではありません。
正しくは茎に付いている部分からすべてが1枚の葉で、小さな葉のあつまりで1枚の葉を作っています。
豆の鞘のような部分を半分に切ると、中に未熟な豆が出来ていました。
これが完熟する鞘が黒くなり、自然に鞘が弾けることで、豆(種)が飛ばされ、新しいレンゲが育ちます。
最後に根をよく見てみましょう。
小さなこぶの部分は「根瘤」と呼ばれ、この中に「根粒菌」微生物を住まわせています。
この根粒菌が、レンゲが肥料として利用されていた大きな理由となっています。
植物には成長に欠かすことのできない窒素・リン酸・カリの三大栄養素があります。
窒素は空気中にたくさん存在するのですが、植物は空気中の窒素を利用することができません。
根粒菌はこの空気中の窒素を植物が利用することのできるアンモニアに変換し、栄養を供給してくれます。
レンゲの根は根粒菌のおかげでたくさんの窒素分を蓄えているので、これを田んぼや畑に混ぜ込むことは、
窒素肥料を与えることになります。
このように植物を肥料として利用するものを「緑肥」と呼び、日本では古くから田んぼがレンゲ畑になっていたのです。
最近では、手間をかけて緑肥を使用するより手軽に安価な化学肥料などが容易に手に入るため、
残念ながら春の田んぼがレンゲ畑となっている景色を目にすることは少なくなってしまいました。
けいはんな記念公園では、毎年ゴールデンウイーク前後にレンゲ畑をお楽しみ頂けます。
ぜひ、レンゲをじっくり観察してみてください。