先日、水景園の里棚田に鯉のぼりを立てました。
鯉のぼりは、公園の文化的要素(端午の節句飾り)と景観的要素(里山に鯉が泳ぐ風景)を 担う毎年恒例の重要なイベントとなっています。
今回は、〈鯉のぼりを立てるまで〉を紹介します。
▲晩春の夕方、風になびく鯉のぼりの風景。
*鯉のぼりとは
端午の節句に鯉のぼりを揚げる風習ができたのは、江戸時代後期ごろ。
鯉が竜になるという中国の故事(登竜門)にちなんだ「立身出世のシンボル」が 男子の成長と出世にあやかろうとする思いと結びついて、「鯉のぼり」になったといわれています。
『名所江戸百景 水道橋駿河台』歌川広重 (国立国会図書館デジタルコレクションより転載) ▲最初は、真鯉(黒鯉)が1匹だけ。現在では、緋鯉と青鯉が一緒に泳いでいますね。
また、私達にとってもコイ(本物の?)は大切な存在。 池で泳ぐコイは景観の一部であるだけでなく、お客様に餌やりなどのサービスを提供してくれています。
▲優雅に泳ぐ姿を見ながらの餌やりは「癒やし」のひと時…。
▲庭園のコイからインスピレーションを受けた芸術作品が展示された時期も…。
*鯉のぼりを立てるまで
1.竹を調達
まずは、鯉のぼりを掲揚するための「竿(さお)」となる竹を調達します。
▲調達場所は、〈竹林あずまや〉の背後にある竹林から。
具合の良さそうな竹を探します。 モウソウチクはまっ直ぐなものが少なく、太くて重く立てるのが難しい反面 この竿の青竹は強固で強風にも折れることがないとされています。
▲じっくりと品定め。先端部分のチェックも重要ですが、高くてなかなか見えない・・・。
▲今年は、この竹を選びました。(昨年に比べるとすこしホッソリめ)
▲切り出した後に、竹の枝払い。このV字を残すことが重要です。
2.設置場所への移動
鯉のぼりを立てる場所は、池に隔てられた対岸の里棚田。 途中には、難所である水景棚が控えており、これを越えなければなりません。
▲10m近い、長い棒を持って、ジグザグに配置された沢飛び石を歩いて運びます。 竹の動きの人の動きが一致しないため、大変苦労します。途中のモミジにも注意。
▲竹の方向を何度も変えながら、慎重に進んでいきます。
3.基礎づくり
設置場所の里棚田に到着しました。
鯉のぼりを立てるのに、竹竿一本というわけにはいきません。 二脚鳥居でしっかり固定します。
▲穴を2箇所に掘ります。円筒の穴をあける道具を使って、両手でグリグリ回して土を掴みます。
▲掴み取った土が積み上がります。
▲掘った穴に支柱を差し込んで…。
▲槌(ハンマー)で地中にしっかりと打ち込みます。打撃面の中心を合わせるのが難しい…。
二脚鳥居が出来たら、次に鯉のぼりを取り付けた竹と添え木を差し込む穴を開けます。
▲添え木と併せた2本分の幅をもたせています。
▲出来上がりはこんな感じ。しっかりと固定されています。
さて、一方竿竹側の準備は…
▲長さを調整。曲がりがきつい部分から切り落とします。
▲鯉のぼりを竹に結わえます。(残したV字の枝を利用して…)
▲絡み防止のためのジグ。(これまでの苦い経験を活かして…)
4.竿を立てて完成
と、あっさりと表現しましたが、一番気をつかう作業。全員で呼吸を合わせて一気に竿を立ち上げます。
▲まっすぐに立ちました!
*最後に
設置した日は曇天でしたが、翌日は見事な晴天に。
何と言っても、鯉のぼりには青空がお似合い。青竹とのコントラストも素敵ですよね!
鯉のぼりは来月5月20日まで泳いでいます。水景園に、そして青空に鯉のぼりが泳ぐ、この季節ならではの風景を見に来てくださいね。
▲ビジターセンター地階では「鯉のぼりを立てるまで」の様子をビデオでご覧いただけます。