水景園の巨石群(大地のゾーン)を通る道が新しくなりました。左官職人が丁寧に仕上げたものです。
▲真っ白な道が通りました。
さて、今回は、公園や庭園にとっての「道」について考えます。
*園路、苑路
一般的に、公園や庭園のなかに敷かれた道のことを「園路」といいます。また、専門用語として「敷石や砂で覆われ、要所には石橋や飛石が盛り込まれたり石灯籠等が置かれた庭園内の細い路地のこと」を「苑路」として説明することもありますが、園路と苑路を同等に表現する場合もあり、その違いについては諸説あるようです。(以下、園路と表現します。)
*園路の役目 ~庭園を中心に~
1.鑑賞上
庭園(公園)を利用いただくうえで大切なのは、景観を楽しみながら散策してもらうこと。来園者が、庭園をゆっくりと眺めながら歩いたり、丘(築山)に登り、池を横切るなどの必要があります。そこで活躍するのが園路。水景園では、これに橋(観月橋)が加わります。
▲紅葉谷は園路でいっぱい?道を蛇行させることで、散策するための距離がうまれます。
▲草の刈り跡は、丘(築山)を登るための柔らかい道に。
▲園路としての沢飛び石。水を近くに感じながら、池を横切ることができます。配置がジグザグなのは、 左右の景色を見て欲しいから・・・。
▲永谷池沿いの「水辺の小道」。出来る限り、池に近いルートに園路が設置されています。
▲空中に架かる橋(園路)からの眺めは最高ですね!
2.装飾として
そもそも園路自体が庭園にとっての装飾要素である、という見方もあります。池に架かる橋や、飛び石、道の曲線美などが挙げられますが、主観的な面もあるので、人によって感じ方が変わりそうですね。
▲橋は巨大な構造物であるため存在感をやわらげることに配慮がなされ、格子状の構造体となっています。
▲「橋のある風景」をスケッチ。
▲橋の下でみることができる「橋脚美」。
▲ライトアップによって、橋の装飾性は高まります。
▲昼間とは雰囲気が異なる橋の上は「夜の園路」。
▲月夜と紅葉。橋は被写体のアクセントに。
▲園路に施された意匠。装飾性が高まります。
▲芝生広場にも沢飛び石があります。両岸あわせて、大小様々な種類の石が使われています。
▲この沢飛び石、よーく見ると矢跡が確認できますね。花崗岩を割る時にできる矢跡をさりげなく見せる「美意識」が活かされています。
▲園路の曲線美が、紅葉谷を彩ります。
▲路地風園路も蛇行線。見通しのよい真っ直ぐ道はつまらない?
3.実用として
園路があるということは、主には何かが通ることを前提に造られた空間であるということ。例えば、観月橋は、対岸に渡るうえで安全(平ら、歩行者専用)かつ最短ルートであることから、来園者(職員)にとって実用的な道といえます。また、鑑賞ではなく散策や運動など歩くこと自体を目的とした使われ方もありますが、歩くルートとして選ばれる背景には、歩くことに専念できる環境(景観や安全性)が重要になることでしょう。
一方で、何かが継続的に通ったことで発生した道も存在しますが、この場合、公園(庭園)にとって園路では無い反面、より実用的な道であると捉えることができますね。
▲果樹園の斜面にみえる「けものみち」。
▲舗装されていない道に残る人の気配。何度歩けば道になるのでしょうか・・・。
▲身障者駐車場への坂道。アスファルトには無い「用と景」のバランス。
▲菖蒲園の八橋。湿地を歩ける道は実用的かつ、庭園においての装飾性を兼ね備えています。
▲田んぼの畦道も実用的ですね。
▲皆さんにとっての「近道」。公園の中で一番実用的な道かもしれません。園路に格上げされる日も近い?
*道の風景
「景色」から「風景」へ。園路には歩く人が必要です。
▲人が歩くことで、「道の風景」は完成します。
*そのほか、さまざまな道
▲人が「園路」とした場所を、動物がたまたま通りました。彼らも「道」を歩いた?
▲こちらも、たまたま・・・ですね。
▲人から見ればアリの「道」。アリにとっては?
▲田んぼのなかにも「道」を見つけました。
▲園路は、一列にならぶ「大繩とび」にとっても最適な場所に・・・。
*さいごに
以上、さまざまな道(園路)についての紹介でした。いかがでしたか。
改めて考えてみると、家の玄関から一歩出た瞬間から「道」は始まるんですよね。これから秋が深まり散策に最適の季節となります。
皆さん各々の道を辿って、秋のけいはんな記念公園に遊びに来てくださいね。
▲紅葉で装飾された「園路」。